金融緩和の効果はまだら
「弊害」を改めて考える時
7月の消費者物価(コアCPI)の上昇率は前年同月比3.1%増と昨年9月から11カ月連続で3%を超え、日本銀行が物価安定目標で掲げる「2%」は16カ月連続で超えている。
こうした物価上昇の下、直近に公表された7月の実質賃金は同▲2.5%と16カ月連続でマイナスだ。
政府はガソリンや電気・ガス料金の補助延長などの追加物価対策を打ち出すというが、実質賃金の低下など人々の生活が厳しくなっている中では当然のことだろう。
一方で日銀は金融緩和維持の姿勢を変えておらず、与野党の一部には緩和をさらに進めるべきとの声もある。
しかし20年以上、続いてきた金融緩和政策で人々の生活は良くなったのか。
株価や都市部の不動産価格は上がり、大手企業や一部の富裕層は潤ったが、この間の賃金や消費の低迷、預貯金利息減少などを見ても緩和の恩恵を実感した人は少ないのではないか。
金融緩和の効果はまだらであり、上層ほど優遇され、利益を得る層と恩恵から排除される層で階層的なバイアスがあると、17世紀以来、経済学者らは長く緩和政策が続くことの弊害を説いてきた。
その「警鐘」に改めて耳を傾ける時だ。