住むところが決まったのだから、就職活動に専念し、1日も早くこの窮地から脱出できるように肖は気合いを入れると同時に、ハードルを下げ「志望企業」の条件などを調整した。ほどなくしてある大型スーパーの求人広告を目にした。さっそくエントリーシートを送ると面接通知が届いた。面接の日、会社に行くと、外には長蛇の列が二つもできていた。20名の定員に、数百人が殺到したようだ。
長く待ったのち、やっと自分の番になったと思いきや、面接官は、彼女が「販売員未経験の新卒」と知るや首を振った。1分足らずで出てきた彼女は列に並んでいるオバサンたちを眺めて、「4年間も大学で学んだのに、自分は彼女らにも勝てない」と落胆した。
このショックで彼女はトラウマを抱えてしまった。「就活恐怖症」となって職探しに気が進まず、鄭が出勤するのを待って、彼女は一人で部屋に籠ってネットサーフィンするようになる。
求人広告の中に「愛人募集」の文字
5月中旬のある日、肖がいつものようにネットサーフィンしていると、某人気サイトの「回憶人生」という名のポストバーにあった「愛人募集」広告に目が留まった。
投稿したのは「張国強(チャンゴーチャン)」、内容は次のようになっていた。
私は山東省青島市の出身で、地元で不動産開発の会社を経営しているが、現在は離婚して独り身であり、いわゆる「鑽石王老五(ツウシーワンロウ:鑽石はダイヤモンド、王老五は独身男性、独身貴族のこと)」のように暮らしている。愛人が欲しいなと思っているが……。もし以下の条件に合う方がいれば、ご連絡いただきたい。
条件、身長165cm以上、体重50キロ、年齢30歳以下の未婚女性であること(追伸、私は地元で知られている実業家であるため、ここでは会社名などの情報を公表するわけにはいかないので、審査に通った方には後日、往復航空券を送付するので、実地考察〈面接〉に来てもらう)。
肖は目を光らせた。もし自分が応募して審査に通れば、このアパートに住まなくて済むだけじゃなく、きっと彼が開発した不動産物件から、好みの高級マンションを自由に選んで住むことができるに違いない。そう想像すると居ても立っても居られず、さっそくチャットの「qq」アプリで投稿者に「友だち申請」し、「愛人に応募」とメッセージを送った。