「一帯一路」構想で緊密さを増す中国とASEAN(東南アジア諸国連合)だが、中国とラオスの国境の町ボーテンでは、住民の99%が中国人で、人民元が流通しているという。南下する中国資本は、ラオスの地元経済ひいてはインドシナ半島に、どのような変化や摩擦をもたらすのだろうか。(ジャーナリスト 姫田小夏)
ラオスでも中国モデルが展開
中国とラオスを結ぶ「中国-ラオス鉄道」(全長1035キロ)の建設計画に両国が調印したのは、2015年11月のことだった。「一帯一路」のもとで進める交通インフラプロジェクトとして、2016年12月に着工を開始し、2021年12月に雲南省の省都・昆明-ラオスの首都・ビエンチャン間の全線が開通した。
今年4月、慶応義塾大学名誉教授の大西広氏は、調査のためにラオスのこの鉄道の全線を利用・調査した。大西教授は新疆、チベットの民族矛盾の実情や中国の対外進出の現地調査を精力的に行っている研究者である。
大西教授の報告によると、ビエンチャンの駅舎の構造は中国とほぼ同じであり、旅客はゲート前で待機し、ゲートが開くと同時にプラットホームに降りていくという動線も同じだったという。乗車券は紙または電子チケットで、乗客は係員のスマホにかざしながら改札を通過する。
大西教授が乗車したのは新幹線のような高速鉄道ではなく、貨物も利用できる在来線の特急列車だった。1両に100席弱の座席を持つ客車が6両で編成されており、いずれも満席だったという。