そうと聞いてさすがに肖も不機嫌になって「私は、自分の全裸写真を簡単に人に送るような女じゃないです」と返した。
「じゃあ自動的に棄権ってことだね。これできみの審査は終了して良いね?」
手に入りかけた「愛人職」。並みはずれた高収入。シンデレラ暮らし。これまで見た美しい夢のすべてが途端に遠ざかって消えそうになる。肖は慌てた。少しだけためらった後、張社長に「送らせていただきます」と返信した。
果たして肖の全身ヌード写真が届き、張社長は甚だ喜んだようで、「大連出張が終わり次第、重慶に飛んできみに会いに行く。俺たちの関係を確立しよう」と返信してくれた。肖は夢見ごこちになった。
ヌード写真を送ってから張社長の態度が急変
数日後、張社長が乗るというフライト情報が届いた肖は、きれいに化粧し着飾って重慶江北空港に向かった。夜9時すぎにフライトが到着し、出口のところで待っていた彼女は、出てくる乗客を真剣に逐一チェックしたが、張社長らしき人物は一向に現れなかった。
昼間通じていた電話もオフになったまま、つながる気配すらない。
空港に向かう途中渋滞に遭ってフライトに間に合わなかったのか、あるいは大連のプロジェクトに突然何か問題でも起きて足止めされたのか。彼女はあれこれ思案して、張社長が現れない理由を考えて、空港のロビーで一夜を明かした。
疲弊してアパートに戻っても休むことなく、パソコンを立ち上げ、張社長の「qq」をチェックすると、いうまでもなく「オフ」だった。肖は「心配しています」「至急連絡ください」などメッセージをいくつも書き込んだ。
丸2日経った。張社長は「qq」に現れた。オンにしたなり、彼はキレた様子で怒り散らした。
「くそっ、重慶の旅はひどいったらありゃしない」
「重慶に来た?」
「行ったさ。重慶に行ったのに迎えに来たきみに会えなかったし、空港で俺を待ったきみも俺に会えなかった」