新型コロナウイルス禍がかなりの落ち着きを見せ、社会は少しずつ元通りになりつつある。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった問題はいまだに解消されていない。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は大塚ホールディングスやエーザイなどの「製薬」業界5社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
塩野義製薬が「ゾコーバ特需」で
過去最高の1Q決算
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の製薬業界5社。対象期間は2023年2~6月の直近四半期(5社いずれも23年4~6月期)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・大塚ホールディングス
増収率:15.0%(四半期の売上収益4992億円)
・エーザイ
増収率:6.9%(四半期の売上収益1969億円)
・協和キリン
増収率:8.4%(四半期の売上収益1057億円)
・塩野義製薬
増収率:52.2%(四半期の売上収益1093億円)
・小野薬品工業
増収率:12.5%(四半期の売上収益1200億円)
今回分析対象とした製薬5社は、全社が増収という結果だった。中でも、塩野義製薬は前年同期比で5割超の大幅増収を果たした。
塩野義製薬の好決算の立役者となったのは、22年11月末に承認された新型コロナウイルス感染症の治療薬「ゾコーバ」だ。ゾコーバの国内における売り上げが、前年同期にはなかった増収・増益要因として寄与し、塩野義製薬では利益面も飛躍的に拡大した。
具体的には、23年4~6月期における営業利益は466億円(前年同期比275.0%増/約3.8倍)、純利益は426億円(同22.6%増)となっている。売上収益・営業利益・純利益はいずれも第1四半期実績として「過去最高」を更新した。
それとは対照的に、塩野義製薬を除く製薬4社の中には、利益面がマイナスとなっている企業(※)が2社含まれている。その企業と減益要因とは――。
※12月決算の企業は、第2四半期累計の利益面を参照した。
次ページでは、各社の増収率の推移を紹介するとともに、利益面とその増減要因について詳しく解説する。