新型コロナウイルス禍がかなりの落ち着きを見せ、社会は少しずつ元通りになりつつある。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった問題はいまだに解消されていない。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は中外製薬や武田薬品工業などの「製薬」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
中外製薬は、第一三共は2桁増収も
アステラスは製薬9社で「独り負け減収」
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の製薬業界4社。対象期間は2023年2~6月期の四半期(4社いずれも23年4~6月期)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・中外製薬
増収率:13.5%(四半期の売上収益2674億円)
・武田薬品工業
増収率:8.9%(四半期の売上収益1兆586億円)
・第一三共
増収率:25.2%(四半期の売上収益3508億円)
・アステラス製薬
増収率:マイナス1.8%(四半期の売上収益3750億円)
製薬業界の4社では、アステラス製薬を除く3社が増収となった。中でも、第一三共は2割超、中外製薬は1割超の大幅増収を果たした。
一方、アステラス製薬は『「ゾコーバ特需」の塩野義製薬にエーザイ…製薬5社が増収も利益で明暗、減益だったのは?』で扱った5社も含め、本連載で分析対象とした製薬業界の計9社で唯一の四半期減収に陥った。
新薬投入などによって競合他社が売り上げを伸ばす中、アステラス製薬が「独り負け減収」に沈んだ要因は何だったのか。
次ページでは、2桁増収を果たした中外製薬と第一三共に加えて、減収となったアステラス製薬の業績について詳しく解説する。