日本再浮上&AIで激変! 5年後のシン・業界地図#9Photo:PIXTA

マクロ景気よりも、「パイプライン(新薬候補)」次第で株価も業績も決まるのが製薬セクターの特徴だ。特集『日本再浮上&AIで激変! 5年後のシン・業界地図』(全16回)の#9では、がん治療薬が伸びる第一三共、売上高トップも新薬開発で苦戦の武田薬品工業、創薬力の中外製薬など主要プレーヤーの今後5年を予測。各社の開発中の有望な薬についても紹介する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

第一三共、武田、中外が
時価総額首位を争う

「革新的な新薬の開発が進んでいる会社は追い風になるだろうし、古い薬への依存度が高い企業はますます逆風が強まっていくだろう」――。今後5年間の医薬品セクターについて、大和証券の橋口和明シニアアナリストはこう予想する。

 医薬品セクターは、従来マクロ景気の動向よりも、個別企業の実力が業績にも株価にも反映しやすい。その傾向が加速しているのだ。

 一方、新薬開発の難易度は高まっている。以前は、最初に開発された薬の完成度が低く、二番煎じの改良薬が世界で売れる余地があった。だか、近年は開発される薬の完成度が上昇しており、「リスクを取って、スピードを意識して画期的新薬を開発する重要度が増している」(橋口氏)。

 直近5年間は、第一三共が抗体薬物複合体(ADC)の将来性を評価され、株価が3倍以上に上昇。武田薬品工業や中外製薬を抜いて時価総額で首位になった。では、ここから5年、10年、ますます激化するグローバル競争を勝ち抜き、伸びる会社はどこか。

 国内はインフレによるコスト高や毎年の薬価改定による薬価引き下げがマイナス材料となるが、「各社とも海外売上高比率を高めている。小野薬品工業が海外で自社販売の体制を構築、協和キリンが北米で自社販売を開始する」(みずほ証券の都築伸弥シニアアナリスト)。

 製薬大手は平均年収が1000万円を超える水準で横並びだが、デジタル化や国内市場の停滞でMR(医薬情報担当者)のリストラの報道が目立つ。今後は年収格差がつく可能性もある。

 次ページでは取材で浮かび上がった医薬品セクターのキーワードを紹介しつつ、業績をけん引する薬やパイプライン(新薬候補)による明暗を解説。主要プレーヤーの今後5年間の業績予想や、勝ち組・負け組候補を具体的な企業名と共に明らかにする。