失敗も当然のマイナンバー制度…最も重要なのに「なあなあ」だったこととは?岸田首相は河野デジタル相らに対し、「特に進捗が遅れている自治体をフォローして、円滑に点検が進むように」と指示したが… Photo:PIXTA

マイナンバー情報総点検本部の4回目の会合が開かれ、公金受取口座や障害者手帳などで新たに計284件のひも付けミスが判明した。総点検は原則11月末までに終え、12月上旬にも結果を公表する見込み。岸田首相は河野デジタル相らに対し、「特に進捗が遅れている自治体をフォローして、円滑に点検が進むように」と指示したが、筆者は「総点検で済むはずがなく、そもそも全体設計に問題がある」と指摘します。(トライオン代表 三木雄信)

これじゃあ失敗するよな…
あきれてしまうマイナンバーの実態

 連載の前回の記事、『デジタル庁が行政処分の赤っ恥…世界のマイナンバー先進国に学ぶ「成功の条件」とは?』では、エストニアやインドを、日本のマインナンバーに似た制度の成功事例として紹介しました。今回はそうした成功事例と比較しながら、日本のマイナンバーでさまざまな問題が噴出している理由について分析していきます。

 結論から言うと、最大の理由は、「ひも付けするためのマスターデータ無しでシステムを稼働させた」から。これは例えるなら、「電話会社が、電話交換局に電話番号のリストを準備することなく、電話事業を開始する」ようなこと。つまり、何とも摩訶(まか)不思議な事象なわけです。

 こうなった原因は、2013年に成立した「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(以下、マイナンバー法)」にあります。この法律では、「個人情報は一元管理ではなく、従来どおり各行政機関などが分散管理して保有する」とされました。ここまではエストニアやインドと同じ。しかし、問題はここからです。

 マイナンバー法第2条第14項では、情報照会・提供機関と都道府県・自治体が分散保有したデータの統合は、「暗号その他その内容を容易に復元することができない通信の方法を用いて行われる」と定められました。

 個人番号を直接用いないことで、個人情報の芋づる式の漏えいを防止する。そして、情報照会・提供機関ごとに異なる「符号」が作成され、情報連携を行うとされています。

 では、このようなマイナンバー法を前提とした「マイナンバーに関連したシステム群」の全貌は、いったいどうなっているのか? 総務省の資料を使いながら探っていくと、思わずあきれてしまうような、「これじゃあ失敗するよな」と言わざるを得ないような実態がよく分かります。