全国健康保険協会で40万人もの人が、資格情報とマイナンバーのひも付け作業が完了していないと判明した。かつて「消えた年金記録問題」の対応をした筆者によると、マイナンバー情報総点検本部の「中間報告及び政策パッケージ」の内容を見る限り、全く根本的な議論がなされていないという。一連の問題を解く鍵は、まず「データの種類」を認識することにある。どういうことか?(トライオン代表 三木雄信)
全国健康保険協会で40万人が
マイナひも付け完了していないと判明
マイナンバーについてさまざまな問題が指摘される中、私は7月初旬に書いた記事『「マイナンバー総点検」が残念すぎる理由〈消えた年金〉収拾の専門家が「ナンセンス」とバッサリ』で、マイナンバーに関する一連の問題は、岸田首相が掲げる「総点検」では解決しないと指摘しました。
そして予想通り、マイナンバー関連の事態は拡大し、議論も紛糾しています。特に影響が大きいと思われるのが8月16日に報道された、全国健康保険協会(協会けんぽ)で40万人もの人が、資格情報とマイナンバーのひも付け作業が完了していないと判明した件です。協会けんぽの加入者は、約4000万人ですから全加入者の1%がひも付けできていないことになります。
これらの人は、マイナンバーカードと健康保険証が一体化した「マイナ保険証」にして、医療機関で使おうとすると使えないと報道されています。
ある大手紙の記事によれば、「住民基本台帳の情報照会で氏名や住所などが一致せず、マイナンバーを特定できないことが主な原因」と協会けんぽは説明。また、厚生労働省は「同様の事例は他でも発生している可能性がある」として、改善策を検討しているそうです。
実は、これは「宙に浮いた年金記録」と全く同じ構造が原因で起きた問題です(詳しくは『マイナンバー問題は「消えた年金記録」と病巣が同じ!総点検してもムダな理由』を参照)。
ところが、8月8日に行われたマイナンバー情報総点検本部の「マイナンバーの紐付け誤りに関する総点検の中間報告及び政策パッケージ」の内容を見ると、全く根本的な議論がなされていないと感じます。
違う人のデータ間でひも付けの「間違い」があることはすでに議論されています。しかし、同一人物でひも付けできていない場合があることは、さらに由々しき事態です。ひも付けのやり方自体に問題があると示唆しているに他なりません。