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マイナンバーの誤登録が相次いでいる問題で、デジタル庁が行政指導の処分となる前代未聞の事態となった。日本ではさまざまな問題が指摘される一方、同様の国民IDで成功している意外な国として、エストニアとインドがある。彼らはなぜうまくいっているのか。日本と何が違うのか。筆者が現地で見聞きした実情も踏まえて解説する。(トライオン代表 三木雄信)
日本でマイナンバーは「秘匿するもの」
エストニアのIDは「公開OK」の理由
2019年5月、私はエストニアの首都タリンの旧市街から車で10分ほど行ったところにある「e-Estonia Showroom」(現在は、e-Estonia Briefing Centreに名称変更)に向かっていました。そこはエストニアの電子立国を世界にアピールするための施設で、私が主宰する英語コーチングTORAIZのプログラムの一環で受講生や修了生と一緒に訪問したのです。
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ここで我々一行は、「エストニアは、多くの機関の調査で世界No.1になるほどデジタル化に成功している」という説明を受けましたが、その政策の多くは事前にある程度知っていることでもありました。
ところが、説明の中で思わず、「えっ」と声を上げるほど驚いたことがあったのです。
我々にプレゼンテーションをしてくれた女性が、自身の本物の国民ID番号が記載された「Digital IDカード」をディスプレーに投影したのです。つまり現在の日本で言えば、マイナンバーが読み取れる状態のマイナンバーカードを聴衆に提示したことになります。
そこで私は、即座に質問をしました。「日本ではマイナンバーは秘匿するものとされています。エストニアのIDナンバーは、そうじゃないのですか?」と。すると、彼女は「公開しても全く問題ないですよ」と笑顔で即答したのでした。
エストニアでは02年以降、15歳以上の全国民に対しDigital IDカードを配布しています。これは、11桁のIDナンバーと氏名、生年月日が記載され、ICチップが搭載されています。ここまでは日本のマイナンバーカードに近いものといえます。
それでは、日本のマイナンバーと大きく異なる点は何でしょうか?