子どもたちが生きる数十年後は、いったいどんな未来になっているのでしょうか。それを予想するのは難しいですが「劇的な変化が次々と起きる社会」であることは間違いないでしょう。そんな未来を生き抜くには、どんな力が必要なのでしょうか? そこでお薦めなのが、『世界標準の子育て』です。本書は4000人を超えるグローバル人材を輩出してきた船津徹氏が、世界中の子育ての事例や理論をもとに「未来の子育てのスタンダード」を解説しています。本連載では、船津氏のこれまでの著書から抜粋して、これからの時代の子育てに必要な知識をお伝えしていきます。

世界標準の子育てPhoto: Adobe Stock

なぜ、スポーツ系とアート系の2つなのか

 賢い親は、子どもの強みを活かした習い事を選んでいます。

 ただ、習い事の選択で難しいのが、スポーツ系やアート系、何を選び、どれを長く続けさせるかということです。

 結論から言えば、習い事の理想はスポーツ系を一つ、アート系を一つ、最低2つを小学校入学前後~高校まで通して続けることです。

「運動が苦手」という子どもであっても、スポーツは一つ継続できるものを見つけてあげることが好ましいです。

 スポーツは子どもの身体発達にとっても重要ですが、それ以上にメンタルタフネスを鍛えてくれるのです。

 サッカー、野球、バスケットボールなど球技が苦手という子どもでも、マラソン、体操、水泳や武道という道もあります。

 競争が激しい現代社会は、子どもから自信を奪う仕組みがあふれています。

 困難や逆境に直面しても、逃げずに立ち向かえる強い精神を育てるにはスポーツを長く続けることが一番です。

 一方のアート系とは音楽や美術や演劇やダンスなどです。できれば楽器演奏や合唱など、音楽系の習い事を何か一つやらせてあげることをおすすめします。

 親に音楽経験があれば、それを子どもに教えてあげるのもよいでしょう。

 音楽を習い事にした子どもは一生の趣味につながることも多く、そこで出会う仲間はスポーツを通して出会う仲間とは異なり、人間関係の幅、すなわち思考の多様性を広げてくれるのです。

 また、社交的な子におすすめなのは「演劇」です。演劇の技術はコミュニケーションスキル全般を向上させてくれます。

 まずはダンスや歌のレッスンからスタートして、演劇へと導いてあげるとよいでしょう。将来コミュニケーションの達人としてあらゆる分野で活躍できるようになります。

 絵を描いたり、物を作ったりというアート系が好きな子であれば、美術館に連れていき、親子でのんびり時間を過ごします。

 世界の一流アートに囲まれて時を過ごす経験をさせてあげるのです。美術館に行く回数が10回、20回と増えるにつれ、アートに対する知識と造詣が深まります。

 家庭でも「アート絵本」を鑑賞したり、親子でスケッチをしたり、クラフトをしたり、アートを生活の一部に取り入れます。

 またマグカップに絵を描かせたり、ポストカードのデザインをさせたり、上手に描けた絵を額縁に入れて飾ったりして、子どもの作品が人目にふれるような仕組みを作ります。

 するとその作品を見た人が「◯◯ちゃんは本当に絵が上手ね!」と褒めてくれます。そして、「もっと絵が描きたい!」「もっと上手になりたい!」と自分から努力を継続するようになってきたタイミングで絵画教室やアートワークショップに参加させます。

集団の習い事が非認知能力を伸ばす

「やり抜く」「衝動をコントロールする」「チャレンジする」「知識や経験を活かす」などを効果的に伸ばすことができるのが「集団の習い事」です。

 集団スポーツ、吹奏楽、演劇、ダンスなど、まわりの子どもたちと密接に関わり合いながら共通のゴールに向かって努力を継続する、という経験によって個人競技では得られない「生きる力」が蓄積されていきます。

 東京成徳大学の夏原隆之准教授が小学3年生~中学3年生までの1581人を対象に実施した「子どもの非認知スキルの発達とスポーツ活動との関連性」調査によると、スポーツ経験のある子どもは、自制心、忍耐力、目標指向などが未経験者に比べて高いことがわかりました。

 またスポーツの種目による違いでは、集団スポーツ経験者、スポーツ活動歴が長い子どものほうが非認知能力(やる気など数値化できない能力)が高いとしています。

 同准教授はその理由を「周囲の仲間の存在や集団への帰属意識が影響しており、協働学習を通じて非認知スキルを獲得していると思われる」と考察しています。

 日本では子どもの習い事というとピアノ、バイオリン、水泳など個人種目を選ぶ傾向がありますが、できれば集団の中で技能を向上させる環境が何か一つあるとよいでしょう。

 集団活動では、一人でどれほど努力をしても、まわりとうまくコミュニケーションをとり、よい関係を構築しなければチームとしてのまとまりややる気を欠き、試合やコンテストで勝つことはできません。

 そのことを知るには、集団の中で努力を継続する、という経験が一番なのです。

(本原稿はToru Funatsu著『すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。』から一部抜粋・編集したものです)