芥川賞が選ぶべき
二つの選択肢
では今後、芥川賞はどうすればいいのか。
まずは二つに一つ、割り切って共感を得て売れる小説を目指すか、売れなくても文学的な道をいくのか。いずれにしても今の中途半端な状態から抜けなくてはならないことだけは確かだ。
もし売れる方向へいくならば、芥川賞は「直木賞の新人賞版」といった位置付けにすべきだろう。
一方、文学的な道を選ぶなら、まずは公募新人賞の選考体制を強化する必要がある。他にも、編集体制を強化しなければならないが、いずれにしても費用がかかる。だから例えば文芸誌を現在の月刊体制から季刊に変更してもいい。掲載作はかなり減るが、そのぶん質を上げるほうがよほど重要だ。
作家としては、まず自分が「正しい」とされる側に立っていないか、正しすぎていないか、客観的に確認したい。文体もストーリーも、「小説っぽさ」に寄ってないだろうか。
筆者は作家である前に文学ファンで、すなわち芥川賞ファンでもある。まだ名付けられない領域に言葉を与えてくれる小説を、読みたくて仕方がない。