歴史小説の主人公は、過去の歴史を案内してくれる水先案内人のようなもの。面白い・好きな案内人を見つけられれば、歴史の世界にどっぷりつかり、そこから人生に必要なさまざまなものを吸収できる。水先案内人が魅力的かどうかは、歴史小説家の腕次第。つまり、自分にあった作家の作品を読むことが、歴史から教養を身につける最良の手段といえる。
直木賞作家・今村翔吾初のビジネス書『教養としての歴史小説』
(ダイヤモンド社)では、教養という視点から歴史小説について語っている。小学5年生で歴史小説と出会い、ひたすら歴史小説を読み込む青春時代を送ってきた著者は、20代までダンス・インストラクターとして活動。30歳のときに一念発起して、埋蔵文化財の発掘調査員をしながら歴史小説家を目指したという異色の作家が、歴史小説マニアの視点から、歴史小説という文芸ジャンルについて掘り下げるだけでなく、小説から得られる教養の中身おすすめの作品まで、さまざまな角度から縦横無尽に語り尽くす。
※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

【直木賞作家が教える】男性読者が多い歴史小説界で、圧倒的に女性読者が多い「稀有な作家」とは?Photo: Adobe Stock

歴史小説は男性読者が多い

歴史小説には男性読者が多いというイメージがあります。

実際に書店の売上データからも、男性読者が圧倒的に多い傾向が明らかになっていて、いかに女性読者を増やすかが業界の長年の課題となっています。

ただ、そんな中でも女性ファンから支持を集めている書き手もいます。

圧倒的に女性ファンの多い作家とは?

代表格が髙田郁(たかだかおる)先生であり、実に読者の8割が女性で占められているといいます。

本当にその女性ファンたちがどこにいるのか教えてほしいくらいです。

髙田先生の例を見る限り、女性は決して歴史・時代小説を読まないわけではないですし、女性が好きな作品も存在することがわかります。

女性読者を開拓する
才覚あふれる女性作家

しかも今は、どちらかというと歴史小説に限らず文芸のジャンルで女性作家の活躍が目立ってきました。

もともと永井路子平岩弓枝など、人気女性作家が存在していましたが、ここにきて才覚あふれる女性作家が増えているように感じます。

彼女たちが新しい女性読者を開拓していくのは間違いないでしょう。

歴史小説の新たな活路とは?

また、女性に支持される作品に歴史・時代小説の新たなヒントがあると考えています。

そういう私自身はというと、嬉しいことに最近は女性読者が増えつつあります。デビュー当時は7:3とか8:2の割合で男性読者が多かったのですが、現在では5.7:4.3くらいまで差が詰まってきています。

性を問わずに楽しめる作品を書きたい。そう思いながら頑張っています。

※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。