──そんなに下がるのですか?

飯塚 エアコンや冷蔵庫を数多く使っている施設ほど、コストダウンの効果は大きいですね。弊社が最も多く手がけているのは老人ホームのような福祉施設、工場、病院などです。中には月400万円かかっていた電気代が100万円以上節約できた例もあります。電気代の約6割は空調といわれるぐらいなので、空調の消費電力を抑えると一気にコストダウンができるのです。

──初期投資はどれぐらい必要ですか?

飯塚 ケース・バイ・ケースですが、業務用エアコンの場合は、馬力や使用頻度、施工台数にもよりますが、半年~1年ほどで償却できる計算です。また、工事期間も規模によりますが、1台につき半日程度で済みます。

──なぜこの事業で起業されたのでしょうか?

飯塚 きっかけは、炭化水素の冷媒ガスを扱っている企業と営業代理店が、エアコンなどへの施工をする会社を探していたことです。自然冷媒への交換は環境と生活の両方にメリットがあり、世の中に役立つ事業だと魅力を感じました。

 以前夫がエアコン関連の仕事をしていたこともあり、挑戦してみようとなったのです。

──ご経験を生かしての起業だったのですね。

エアコンの冷媒を自然冷媒に替えることで二酸化炭素削減とコストダウンを実現エアコンの既存ガス回収作業。この後、自然冷媒を充塡する
●株式会社プラスナイン 事業内容/自然冷媒推進事業、フロンガス回収事業、従業員数/2人 所在地/秋田県湯沢市材木町1‐3‐6、電話/0183‐66‐9223、URL/p9tasuku.wixsite.com/plus9

飯塚 ただ、私自身は初めての起業だったので、ものすごく不安でした。フロンの回収機やそれを運ぶ車などの初期投資のために、融資を受けることが必要でしたが、最初に相談した金融機関では融資を受けられませんでした。起業に先立ち、それまで勤めていた会社を辞めたのですが、融資を受けられなければどうなるのか……。

 そんなときに親身になってくれたのが、羽後信用金庫さんでした。地域密着で頼りになると会社員時代から聞いていましたが、実際自分が起業する立場になり、そのありがたみを実感しました。

──今後の抱負をお聞かせください。

飯塚 現在は営業代理店に顧客開拓をお願いしている状況ですが、自ら営業することも許可されているので、自分たちでも自然冷媒のよさを伝えていきたいと考えています。

 私たちが住む秋田県湯沢市でもSDGsを推進していて、脱炭素・脱フロンに手を挙げていますので、将来的には自治体と一緒になって環境事業に取り組んでいきたいですね。

(取材・文/杉山直隆、協力/羽後信用金庫、「しんきん経営情報」2023年11月号掲載)

【編集部注】
一般的に冷凍空調機器の冷媒を純正指定品以外のものに交換した場合、メーカーの保証の対象外となります。また、ハイドロカーボン(HC)系を成分とする冷媒は漏れ等が生じた場合、強い燃焼性があり、危険性が指摘されています。なお記事で取り上げたプラスナインでは、こうした点に注意を払い、顧客に十分な説明を行い了承を得た上で施工を行っています。(2023年11月8日 13:05 ダイヤモンド社出版編集部)