子どもたちが生きる数十年後は、いったいどんな未来になっているのでしょうか。それを予想するのは難しいですが「劇的な変化が次々と起きる社会」であることは間違いないでしょう。そんな未来を生き抜くには、どんな力が必要なのでしょうか? そこでお薦めなのが、『世界標準の子育て』です。本書は4000人を超えるグローバル人材を輩出してきた船津徹氏が、世界中の子育ての事例や理論をもとに「未来の子育てのスタンダード」を解説しています。本連載では、船津氏のこれまでの著書から抜粋して、これからの時代の子育てに必要な知識をお伝えしていきます。

世界標準の子育てPhoto: Adobe Stock

学力向上には、読む力の育成が欠かせない

 日本では「読む力」の重要性についてあまり議論されることはありませんが、欧米では生徒の学力向上のために「読む力」を身につけさせることがいかに重要であるかが長年研究されています。

 たとえば「9歳までにリーディング力(読む力)が身につかないと、学年が上がってから勉強に追いつくのが難しくなる」という研究報告を受け、南カリフォルニアを中心に「Reading By 9」という「9歳までの読む力の重要性」を啓蒙するキャンペーンが行われています。

 いわゆる9歳の壁は「生活言語」から「学習言語」への移行と関わっています。

 授業内容が具体的思考から抽象的思考へ、直接体験から間接体験へとシフトしていく小学4年生頃になると勉強についていけなくなる子どもが急増します。

 日常生活の身近な話題から、文化、歴史、経済、科学などへテーマが広がっていく時、語彙力や読解力が発達していないと対応が難しくなってしまうのです。

 これはアメリカに限った問題ではありません。日本でも「10歳の壁」「小4の壁」が話題になっていますが、同じ理由です。

 語彙力と読解力の土台ができていないと、算数の文章題でつまずいたり、社会や理科の用語が理解できなかったり、勉強面で苦手意識が強くなってしまいます。

本の読み聞かせで、想像力をふくらませることが読解力の第一歩

 では、読解力を身につけてもらうにはどうすればよいのでしょうか?

 その一番の方法は、「読書」です。

 読解力には大きく想像(イメージ)力と論理力があり、まずは「本の読み聞かせ」によって想像力をふくらませるトレーニングをしていきます。

 優秀な子どもが育つ家庭では、もれなく子どもが読書好きに育っていますが、これは親が小さな時に読み聞かせを行っている場合がほぼ100%です。

 もともと、すべての子どもは豊かなイメージ力を持って生まれてくるのですが、この力は訓練しないとだんだん弱くなってしまうのです。

 読み聞かせを行うと、子どもは物語を頭の中に具現化して、まるで映画を見ているかのようにイメージの世界に浸ることができます。

 この訓練を積み重ねていくと、子どもはストーリーと自分の経験を結びつけたり、主人公に同化したり、空想を巡らせる楽しみを味わえるようになります。

 子どもが自分で本を読めるようになると読み聞かせをやめてしまう親が多いですが、読み聞かせは小学生になってからも継続することをおすすめします。

 親に読んでもらうのと自分で読むのでは楽しさの次元が違うのです。

 自分で読む時は「読むこと」にエネルギーを使うので、イメージに集中できず本の世界に入り込めません。

 親が読み聞かせをしてあげると、子どもは安心してイメージの世界を楽しむことができるようになります。

(本原稿はToru Funatsu著『すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。』から一部抜粋・編集したものです)