チャンスが少ない
人のためにできること
ノアとキャロラインはホームレスの人々を助けたい、とも言った。
最近では、路上や地下鉄の駅に以前よりも多くのホームレスを見かけるようになっていた。先日、ノアは、近くの街角で物乞いをしている男性に、ランチボックスのなかにあったベーグルをあげた。キャロラインは、青い作業服を着て学校近くの歩道を清掃する男性と親しくなっていた。
「あの人、最近までホームレスだったんですって」キャロラインは言った。「でも、いまは通りを掃除して、1時間に7ドル40セントもらってるのよ。とってもいい人なの。自分は”覚悟もやる気も能力もある”って言ってる」
それは、その男性に仕事を斡旋したドー・ファンドの標語だ。「僕はドー・ファンドに20ドル寄付する」
「ほかには?」エリザベスが訊いた。
ベンはがん研究を選んだ。野球チームの監督であるジョンが、ステージ4の大腸がんで化学療法を受けているところだからだ。
また、体の自由を失った退役軍人のことも思いやった。
「イラクとアフガニスタンから負傷して戻ってくる兵士がたくさんいるから」ベンは説明した。「テッドお祖父ちゃんのためにもそうするべきだと思う」
ベンは、エリザベスの父親が、第二次世界大戦のバルジ大作戦で片腕を失ったことを言っているのだ。テッドは子どもたちが生まれる前にこの世を去っていたが、子どもたちは彼を誇りにしていた。
ノアが大切に思っていることはふたつあった。
「木を守らなくちゃ、パパ。木がなくなったら家具も、紙も、酸素も作れなくなっちゃう。ぼくたち生きていけなくなる」
また動物の保護センターにもお金をあげたいと言った。「マックのためだよ」僕たち家族は2、3ヵ月前に仔犬マックの里親になった。マックは、あと数日で殺処分されるところだったのだ。マックが殺されてしまったかもしれないと考えるのさえ、僕たち家族には耐えられないことだった。
子どもたちが話し合うのを聞き、さまざまな理由が人の気持ちを動かすことに驚いた。
ベンとキャロラインは、スラム街の子どもたちを支援する団体に寄付をしたいと言った。
「チャンスが少ない子どもたちのために」と、ベンは説明した。映画『プレシャス』の予告編で、性的虐待を受け、16歳になるまで文字を読んだり、自分の意見を言ったりすることを学ぶ機会がなかった少女を見て、そう思ったらしい。