子どもたちが生きる数十年後は、いったいどんな未来になっているのでしょうか。それを予想するのは難しいですが「劇的な変化が次々と起きる社会」であることは間違いないでしょう。そんな未来を生き抜くには、どんな力が必要なのでしょうか? そこでお薦めなのが、『世界標準の子育て』です。本書は4000人を超えるグローバル人材を輩出してきた船津徹氏が、世界中の子育ての事例や理論をもとに「未来の子育てのスタンダード」を解説しています。本連載では、船津氏のこれまでの著書から抜粋して、これからの時代の子育てに必要な知識をお伝えしていきます。
教育環境は、シンプルに考えてゆく
子どもの教育環境を選ぶ時、親はどのような考え方をすべきでしょうか。
それは、「あれもこれも」ではなく、シンプルにしていくことです。
特に最初の習い事や学校選びに関しては、子どもの性格や心身・知能の発達状況を見極めた上で、我が子に合った環境を考えます。
何事も最初の印象が肝心で、最初の経験が楽しいものであれば、子どもは学校が好きになりますから、学力や人間関係をスムーズに構築できます。
最初の経験が悪いと学校嫌いにしてしまいますから、学齢期を通して学校に対して不信感を持たせてしまう可能性があります。学校の先生の対応や、まわりの子どもたちとの関わりによって、子どもは学校を好きにも嫌いにもなり得るのです。
極端な話ですが、日本からアメリカに移り住んできたばかりの子どもを、アメリカの学校にポンと入れたらどうなるのかを想像してもらいたいのです。子どもは英語がわからず、授業がわからず、友だちができず、文化や習慣の違いがわからず、学校不適応を引き起こします。最悪の場合、不登校になったり引きこもったりします。
日本で子どもの学校を選ぶ際も、同じように慎重に考えてもらいたいのです。
子どもだからすぐ慣れるだろう、というのは多様化が進んだ現代社会では非常に危険な考えです。すべての子どもが学校に適応できるのであれば、いじめや学力不振や不登校などの問題は一切起きないはずなのです。
幼児期から児童期の子どもの環境を作るのは親です。子どもは自分で環境を選ぶことができません。
ですから、親が我が子にとって最高の環境を探してあげることが重要なのです。
高すぎる期待は禁物である
しかしながら、現在は都市部を中心に選択肢が限りなく増えてきています。
学校であれば、私立・公立はもちろん、一貫教育校、モンテッソーリやシュタイナーなどの理念を実践する学校、国際バカロレア認定校、イマージョンスクール、インターナショナルスクールなど、特色ある学校も増えています。
選択肢が多いというのは豊かなようですが、一方で親にはクリティカルシンキングが必要です。
どうしたら我が子にベストマッチの学校を選ぶことができるのか、洞察力と想像力を働かせて考えていかなければなりません。
習い事においても同様で、英語が必要だ、プログラミングが必要だ、スポーツが必要だと、子どもの好き嫌いや特性を無視してたくさんの習い事に通わせても、結局何も身につかず失敗経験につながっては本末転倒です。
「選択」研究の第一人者、コロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授は言います。
「選択肢の過剰は、弊害のほうが大きい。選択肢が多すぎると、人は正しい判断ができなくなり、選択しないことを選択する。たとえ客観的に正しい選択をしたとしても、自分の選択に満足することができなくなってしまう」
また、スワスモア大学のパリー・シュワルツ博士はこう言います。
「選択肢の多さが人々の幸福度を下げている。間違った選択をしてはならない、というプレッシャーを与え、選ばなかったほうの選択肢が頭から離れず、後悔する。また選択肢が多いと、選択するものに対する期待値が高まり、何を選んでも満足できない」
学校や習い事選びにも同じことが当てはまります。
都会に住み、選択肢が多いことは一見すると子どもにとって「豊か」に思えます。しかし多くの親は子どもにとってベストな環境を選ぶことができなくなってしまうのです。
また、「たくさんの選択肢から選んだのだから、最高の教育を与えてくれるだろう」という期待感が高まり、現実とのギャップが生じた時、自分の選択を後悔したり、モンスターペアレント化するケースが多いのです。
上手な選択をするには、余計なものを排除することが大切です。
子どもの強み、いい面、長所を伸ばしてくれる環境は何か? まずはその一点だけに集中して考えることが原則です。
スポーツ系、アート系、勉強系とカテゴリーを分けて、それぞれから「我が子の強みを伸ばしてくれるもの」を選ぶことに尽力してください。
(本原稿はToru Funatsu著『すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。』から一部抜粋・編集したものです)