言い分が「見当違い」なお客さまには次善策を提案する

 普通の常識では考えられないようなクレームを持ち込むお客さまへの対応が必要になることもあります。たとえば、役所の窓口に「税金を安くしろ!」といった法律上受けられないクレームが持ち込まれることがあります。

「税法で正しく課税されているのでできません」と突き放したいところですが、残念ながらそれではお客さまの怒りは収まりません。かといって、税金のしくみを事細かく説明したところで理解を得られそうにもありません。

 こうしたお客さまに相対するときは、怒りの背後にあるニーズや問題の本質を探りながら話を進め、本来の解決策ではなく、次善策を提案するのが効果的です。

 前出の税金のクレームであれば、「昨年より金額が上がっていますか?」と、問題の本質を探る言葉かけをして、「そうだよ。給与が下がっているのに、なんで税金が上がるんだ!」と返してきたら、こちらのものです。台帳を持ってきて、ゆっくり説明できますし、うまくいけば、分割納付や保険料の話もできるかもしれません。税金とは別の解決法を提案し、担当窓口に案内するのです。

 実際、私はこの方法で、自分の担当外のクレームについても満足してもらってきました。

 もし次善策を思いつかないようなら無理をせず、「私には判断できないため、確認して改めてご連絡差し上げます。ありがとうございます」と、時間を置くようにします。

 時間を置くことで、先方が間違いに気づくこともありますし、怒りが自然消滅することもあります。また、こちらで十分確認を行なったうえでの結論であることが伝わるため、納得を得られやすくなります。

 繰り返しになりますが、クレームのお客さまには「そうなんです」と言わせるための声かけをして、こちらを味方として認識してもらえるように、客さまの感情をきちんととらえて、「そうなんです」のひと言を引き出すようにしましょう。