クマによる人身被害が後を絶たない状況だ。本来は臆病だとされるクマは、なぜ人間を襲い始めたのか。クマの生態に詳しい、NPO法人・日本ツキノワグマ研究所の米田一彦理事長に聞いた。米田氏はクマに9回襲われ、そのたびに生還した経験を持つ。インタビュー後編となる今回は、クマの目撃情報が寄せられた東京都の町田市や八王子市に続き、首都圏でこれからクマが出るかもしれない「要注意エリア」について、米田氏の見解をお届けする。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
クマ界の「序列」と
首都圏の要注意エリアとは?
「クマが人を襲い、けがをさせた」「襲われた人が亡くなった」。そうした凄惨な事故が連日のように報道されている。
環境省が11月1日に発表した速報値によると、2023年4~10月にクマに襲われたのは180人。統計開始以来、最多を記録した。このうち死亡者数は5人に上る。
クマは本来、臆病な性格であり、人に対する警戒心も強いとされる。にもかかわらず、なぜここにきて人間を襲い始めたのか。その理由を、NPO法人・日本ツキノワグマ研究所の理事長を務める米田一彦氏に聞いた。
米田氏は秋田大学教育学部を卒業後、秋田県立鳥獣保護センターに勤務。1986年以降はツキノワグマの研究に専念し、89年に同研究所を立ち上げた“クマの専門家”である。
また、米田氏はクマの観察や追跡調査を行う際、遭遇・捕獲したクマに9回襲われ、そのたびに生還した稀有な経験を持つ。有効なクマ対策について身をもって知る、まさにスペシャリストだ。
米田氏へのインタビュー記事の前編『クマ被害激増はドングリ凶作説だけでは説明できない!クマに9回襲われて生還した識者が緊急解説』では、クマの世界にも階級や力関係があり、都会化したクマである「アーバンベア」は、実は力の弱いクマであることが語られた。
後編となる今回は、クマの世界における「序列」をさらに掘り下げ、力を持つクマが人を襲うケースについて解説する。また、東京都の町田市や八王子市、奥多摩町など、首都圏でもクマが目撃されていることを踏まえ、今後「クマ出没」が懸念されるエリアの実名を緊急提言する。要警戒のエリアとは、一体どこなのか――。