23年4月に逝去した「ムツゴロウさん」こと畑正憲氏はかつて、離乳期のヒグマのメスを娘として育てると誓い、人間とヒグマの共存に挑戦した。そして、その記録を小説に書き記しているのだが、その顛末は衝撃的なものだった。(イトモス研究所所長 小倉健一)
ムツゴロウさんが決意した
ヒグマとの共存生活
フジテレビ系の大人気番組「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」などを通じて、また、「ムツゴロウの青春記」などの数々の小説を通して、多くの国民に親しまれた「ムツゴロウさん」こと、作家の畑正憲氏が4月5日、心筋梗塞で亡くなった。87歳だった。
1986年には自身が監督・脚本を手がけた映画「子猫物語」が約750万人の観客動員を記録している。
ムツゴロウさんが、麻雀がものすごく強いとか、幼少期を満州で苦労して過ごしたという解説をする人も多いが、やはりムツゴロウさんといえば、動物研究家としての活動だろう。子どもの頃から動物と共に過ごし、小学3年生で日本に帰国してからは、大分県日田市で暮らし、手づかみで魚を捕るなどして過ごしたという。
東京大学を卒業後、33歳で「われら動物みな兄弟」で第16回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞したことを契機に、作家の道に進んだ。
1970年、ムツゴロウさんは猛獣として知られる「ヒグマ」を北海道の無人島で飼うことを決意し、その模様を「どんべえ物語」という小説に書き記している。この本は、ムツゴロウ流の動物記なのであるが、いわゆる動物観察日記かと考えて読み進めると、面を食らうハメになる。