新人教育。これはマネージャー経験者なら誰もが頭を抱えたことのある問題だろう。
「ロジカル思考やプレゼン力より大事なことがある」
と語るのはコンサルタントとして数多のビジネスパーソンと対峙し、コンサルティング会社の採用にも携わってきた安達裕哉氏だ。
「ぶっ刺さりすぎて声でた」と話題沸騰中の安達氏の書籍『頭のいい人が話す前に考えていること』は、話し方を鍛えることよりも、話す前に考えることの重要性を「考えている人」「考えていない人」の具体例を交えながら分かりやすく説く。本稿では、2023年7月22日に開催した【20万部突破記念! 「コンサル脳」をインストールして誰でも頭のいい人になる方法】セミナーで、安達氏が語った内容を一部追記編集しお届けする。
コンサルタントになって厳しく言われたこと
コンサルタントといえば、「ディスカッション(議論)に強い」「ロジカル(論理的)に議論する」といったイメージがあるかもしれません。たしかに、そういう側面もあるでしょう。
ですが、実際にクライアントを訪れた際に、お客様を論破したり、議論になったりした時点で、仕事上は「落第」です。
クライアントの中には、「コンサルが偉そうに、弊社の課題なんてわかってんのか!」などと、けんか腰のお客様もいらっしゃいます。
そんなお客様に対して、「御社の課題は、私がよくわかってます。教えて差し上げます」などと上から目線で返そうものなら、コンサルタント失格なのです。そのうえロジカルに詰めたら、次から出入り禁止になるはずです。
では、コンサルタントとして、何とお答えするのが正解でしょうか。
けんか腰のお客様には、「ぜひ教えていただけたらありがたいです」とへりくだって、いったん相手の勢いをいなすこと――これが肝要だと思います。そして、お客様にも腹を割って社内の課題や問題意識について話していただけるような「信頼を築くこと」が、なにより大切です。
なぜなら、ピーター・ドラッカーがかつて指摘したとおり「コンサルタントは相手が動いてくれないと成果を出せない」ためです。(『プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか』P・F.ドラッカー著/上田 惇生訳/ダイヤモンド社 参照)
お客様にまずは信頼してもらわなければ、その会社の真の課題はわかりません。正直に社内の実情について話をしてもらって、課題の解決方法を探り、実際に動いてもらうことで、はじめて成果につながるのです。
この「まず信頼を築く」重要性は、私がコンサルタントになったばかりのころ、上司から厳しく言われたことです。
「まだ専門知識もないのだから、信頼を得られるふるまいを身につけないうちは、お客様の前に出せない」
と何度も言われたのです。
商談後の「今日どうだった?」にどう答えますか?
経験の浅い新人ほど、自分が同業界について持っている知識をひけらかして、お客様を怒らせる、というのもよくあるトラブルです。
このように「賢いふり」をする新人というのは意識が高く、一見頭も良くて、周囲からも期待されるのですが、意外と伸び悩む……というケースが多々あります。
一方で、「入社時はパッとしなかったけど、ちゃんと仕事して周囲から信頼を得て伸びる新人」もいます。
両者の違いは何なのでしょうか? どう見分ければいいのでしょうか。
簡単です。
新人が営業や商談、打ち合わせから帰ってきたらこう聞くのです。
「今日、どうだった?」と。
え、そんなことでわかるんですか。と思うかもしれません。
社会人のみなさんは上司からこのように聞かれた経験のある人も多いでしょう。
みんさんはどう答えていたでしょうか?
伸びる新人はこう答えるのです。