コミュニケーションは「合気道」のように

「お客さんはこんなことを話していました。うちの商品についてはあまり話せませんでした」

 一方、こう話す新人は、賢いふりをしている可能性があります。

「これとこれとこれについて話せました!うちの商品のメリットについては理解してもらえたと思います」

 両者の違いはなんでしょう?

 それは、相手が主体か、自分が主体か、です。

 前者は、コミュニケーションの相手である、顧客が話していたことを答えています。

 後者は、自分が話したことについて答えてます。

 商品やサービスの価値は、顧客が決めます。どれだけ自分が良い商品だと思っても、受け手が良いと思わなければ意味がありません。

 これは、コンサルタントに関わらずあらゆるビジネスの本質です。

 前者はお客さんが考えていることを必死に読み取ろうとします。お客さんの言っていることがわからなければ、

「すみません。わからなかったので、もう少し詳しく教えていただけませんか」

と聞くことができるでしょう。恥ずかしいかもしれません。恥をかくかもしれません。

 しかし、新人時代に恥をかける人は、その後伸びる可能性が高いと言えます。

 一方、後者の自分が主体にある人は、自分が話したいことを必死に話し、相手を置いていきぼりにしてしまう可能性があります。

 賢いふりをしてその場を乗り切れるかもしれませんが、その後、意外と伸び悩むのです。

 コンサルタントになって叩き込まれたのは「賢いふりをするな」「とにかく相手の話を聞け」ということでした。

 こうしたコンサルタントのコミュニケーションの基本は、「合気道に似ている」と私は思っています。
 合気道というのは、「相手と競うのではなく調和をめざし、共に道を究める態度で臨む」のだそうです。これこそ、コンサルタントが真っ先に身につけるべき「ふるまい」なのです。

 現在は経営者として、さまざまな業界の人とビジネスを通じて関わっていますが、このコンサルタントとしての「合気道的ふるまい」はどんな業界でも通用すると実感しています。

 もちろん、ロジカルシンキングやプレゼン力も大事ですが、「はい、論破」というフレーズが流行するような現代に、「合気道的ふるまい」こそ必要なスタンスなのでは、と心から思います。