子どもたちが生きる数十年後は、いったいどんな未来になっているのでしょうか。それを予想するのは難しいですが「劇的な変化が次々と起きる社会」であることは間違いないでしょう。そんな未来を生き抜くには、どんな力が必要なのでしょうか? そこでお薦めなのが、『世界標準の子育て』です。本書は4000人を超えるグローバル人材を輩出してきた船津徹氏が、世界中の子育ての事例や理論をもとに「未来の子育てのスタンダード」を解説しています。本連載では、船津氏のこれまでの著書から抜粋して、これからの時代の子育てに必要な知識をお伝えしていきます。

世界標準の子育てPhoto: Adobe Stock

得意科目がなければ、学校が拷問の時間になってしまう

「文武両道に育つ子ども」の共通点を紹介します。

 それは、どれだけスポーツや音楽で秀でた才能を持つ子どもでも、勉強で「強み」を一つ以上持っているということです。

 すべての子どもは、毎日5~6時間学校で授業を受けなければなりません。得意教科を持っていなければ、勉強へのモチベーションがどんどん低下してしまいます(泳げない子どもを毎日プールに5~6時間入れておくようなものと私は父兄に説明しています)。

 たとえば国語や社会が苦手でも、算数が得意であれば何とか学校の授業についていけるのです。

「自分は算数が得意だ」という気持ちが「自信」となり、弱点を補ってくれるからです。

 勉強系の強みは、一つの教科で十分です。さらに言えば、一つの教科の中でも「計算が得意」とか「図形が得意」で構いません。

 教科の一部分でも得意なことがあれば自信につながります。得意分野から発展させて教科全体、勉強全体を得意にすることはまったく難しくありません。

 本が好き、文章を書くことが好きという子どもなら国語。動物や昆虫が好きな子は理科。料理が好きな子も理科。パズルやゲームが好きな子は算数。プラモデルや機械が好きな子はエンジニアリング。

 そうして、子どもの興味を学問分野へと導いていくのは親の仕事です。家の内外で子どもの好奇心を大いに刺激してあげることが重要になります。

小学校時代に「博士」にさせることが、勉強好きにさせるコツ

 得意教科を持たせるコツは、小学校時代に、子どもを「◯◯博士」にすることです。

 昆虫博士、動物博士、地理博士、コンピューター博士などの評判を子どもが得ることができれば、自主的にその分野の知識を深めていくようになります。

 そこから発展させて学問との関連性、つまり世の中のあらゆる事象の背景には学問が存在することを教えてあげれば、子どもは勉強することの意味を実感として理解できるのです。

 賢い親たちは子どもに「勉強しなさい」「宿題しなさい」「プリントしなさい」と決して言いませんが、自主的に勉強をさせる仕組みを作っています。

 たとえば、小さな子どものおもちゃ箱にはブロック、パズル、レゴ、科学おもちゃなど知的好奇心を刺激するおもちゃを詰めています。

 さらに、トランプ、百人一首、UNOなどのカードゲーム、そして、モノポリー、チェス、オセロ、将棋などのボードゲーム。これらのアナログゲームは子どもの思考を育てる最高の教材です。

 実は勉強ができる子は、家族でボードゲームやカードゲームで遊んだ経験を多く持っています。

 小さい頃から「思考」を鍛える遊びをたくさんすると、集中力、イメージ力、予測力、問題解決力が発達しますから、当然、学業にも強くなるのです。

 また、子ども専用の本棚を作り、そこには様々な図鑑がそろっています。

 動物図鑑、魚図鑑、昆虫図鑑、食べ物図鑑、宇宙の図鑑、恐竜図鑑、人体図鑑、植物図鑑などで自然科学面の興味を引き出すのです。

 もちろん図鑑以外にも、子どもが好きな本や小説も並べておきます。子どもが一人の時にどんな本を読んでいるのか、子どもの「好き」を見極めるために本棚を充実させることが理想です。

 子どもが一人で遊んでいる時の様子を観察すると、興味あること、好きなことがわかります。そうしたら、その分野に関連した知識や経験を、遊びや親子の触れ合いの中でどんどん広げていくのです。

 動物が好きな子どもであれば、動物の興味深い知識が詰まった本を与えれば、自分からどんどん勉強していきます。

 パズル(考えること)が好きな子どもには、算数パズル、数独、囲碁や将棋の本。漢字が好きな子どもには漢字検定を受けさせたり、漢字アプリで自主勉強できるように環境を整えていきます。

Points 勉強を好きにさせるには
・「好きなこと」を入口に、学問分野にシフトさせる
・子どもの興味を探るには、各種おもちゃを用意し、遊ばせる
・本棚を充実させ、どの分野の本が好きなのか観察する
・遊びの延長線上で、好きな分野の勉強を始める

(本原稿はToru Funatsu著『すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。』から一部抜粋・編集したものです)