このまま帰ったら、この金キラ王老五に逃げられるかもとちょうど蝶々の気持ちも焦っていたところで、陳の誘いに乗らない手はない。彼女はするりと乗り込んだばかりの車から降りた。
そのあと彼女の望む通り、二人はカフェを飲み、そして近くのホテルに入っていった。
「大魚を釣ったよ」
翌朝男女が愛を交わしたベッドの写真を友だちグループに送ると、莉々と小方がすぐ反応した。
「わぉ、すごい効率」
「どんなどんな? はやく王老五の写真見せてよ」
「27歳の富二代(金持ちの二世)、会社経営してるの。今度実物紹介するね。超イケメンだから」
それからというもの、陳を攻め落とそうと、蝶々はあれこれ知恵を絞った。デートに誘う頻度を上げて、ブランド品の紳士用の小物をプレゼントしたり、高級レストランに招待したりして、彼女曰く「金持ち釣る餌は金しかない」のだ、と。
つき合ってひと月。二人の恋愛はほぼ沸点に近いと判断した蝶々は、「親友に会わせたい」と申し出た。
「ほぉ。なら今週末僕の別荘に招待しようか?」
意外にも、陳はあっさり頷いた。それに教えてくれた別荘の場所が上海の金持ちしか住んでいないエリアだった。
週末、蝶々は一足早く陳の別荘に行き、まるで別荘の女主人のようにエプロンを腰に巻いた姿で、親友の二人を迎え入れた。果たしてイケメンの陳を見て、また華麗な別荘を見回りながら、莉々と小方はすごいすごいと言うばかりで、羨ましさや嫉妬の気持ちが目から溢れた。
経済力を言うなら小方は今も、小さな料理店を経営する実家から仕送りがあって、蝶々や莉々に比べてずっと恵まれている。また経済的には勝負にならない莉々だって、目鼻立ちがはっきりした洋風美人で、三人の中で最も際立って男の視線を惹きつける存在だ。
ワインがだいぶ入ってほろ酔い様子の陳。上機嫌な目で三人を眺め、女たちの提案で連絡先も交換した。
男の携帯を覗くと……意外な事実が発覚
あと一頑張りで、別荘の女主人になれる。しかし陳は、同棲を熱望する蝶々に、「別荘を結婚用にリフォームしたい」と返した。
仕事に別荘のリフォームも重なって、陳は急に忙しくなった。週数回もしていたデートは週1回、月1回と減って、ついに3カ月も経ってようやく会うことになった。
その夜ホテルで情熱を燃やしたあと、陳はすぐに寝込んでしまった。自分の男が浮気でもしているじゃないかと疑った蝶々が、携帯をチェックしようとしたその時、メッセージが飛び込んできた。彼女は陳の指紋で携帯を解錠して中身を見ると、なんと小方と莉々からのものもあった。もちろん内容はいずれも親密関係を持つ男女の会話だった。