なぜ日本肝臓学会は
改めて注意を喚起するのか

1つは、ALTは肝臓の状態がストレートに反映されやすい数値だからだ。ALTはほぼ肝臓にしか存在しないため、この数値が高ければ高いほど肝臓の細胞が死んで破壊が進んでいることを示す。これに対し、肝機能を表す他の数値であるAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)は心臓や筋肉、赤血球、γGTPは胆道や腎臓、膵臓の病気でも高くなるため、これらの数値が高くても必ずしも肝臓に異常があるとは限らない。
「2つ目の理由は、法律で定められた健康診断の血液検査で必ず調べることが義務づけられている数値の1つだということ。そして、3つ目は、これまでこの数値の重要性があまり知られていなかったために、ALTが高くてもそのまま放置する人が多かったからです」
何しろ、健康診断や人間ドックの結果が示されるALTの正常範囲の基準は5~40U/Lや10~42U/Lなど、医療機関や検査会社によってバラバラなのが実情だった。日本肝臓学会が、「ALT30を超えたらかかりつけ医を受診」と初めて基準値を示したことで、これまで肝機能が正常だと思っていた人も「異常」と判定される可能性がある。