肝炎や肝硬変にならない
適度な飲酒量は?

 では、ALTが30U/Lを超えるとなぜ危険なのだろうか。

「ALTが30U/Lを超えていると、慢性の肝臓病になっている可能性があるためです。慢性肝臓病は、命を奪う恐れがある肝硬変や肝がんに移行しやすいことがわかっています。健康診断の結果をチェックしてみてALTが30U/Lを超えていたら、B型・C型ウイルス肝炎やアルコール性肝障害、脂肪肝などになっていないか、かかりつけ医に相談して検査を受けましょう」

 肝硬変は、肝臓がウイルスやアルコール、脂肪の蓄積などによってダメージを与えられ続け、線維化して硬くなり、代謝や解毒、胆汁を出すなど肝臓の働きに支障が出る病気だ。進行すると腹水がたまったり黄疸が出たり、血が止まりにくい、意識障害などの症状が出たり肝不全になって命を落とすこともある。

 日本では長年、その原因はB型・C型肝炎ウイルスによる慢性肝炎が多かった。しかし、近年、感染者の減少と治療の進歩でウイルス肝炎は減少し、アルコールによる肝障害と運動不足や肥満が原因の非アルコール性脂肪肝炎から肝硬変や肝がんになる人の割合が増加している。

 日本肝臓学会が肝硬変になった人の原因を調べた実態調査では、2014~17年まではC型肝炎ウイルスによるものが40.2%でトップだったが、2018年~21年はアルコール性が28.8%で最も多くなった。非アルコール性脂肪肝炎も12.7%で、前回(9.1%)より増加している。

「原因の如何を問わず肝炎が慢性化すると、肝臓の細胞がどんどん傷ついて死に、20~30年かけて肝硬変へ進行していきます。慢性肝炎は早い段階で見つけて禁酒、減量、運動習慣をつけるなど生活習慣を見直し、原因に応じた治療をすれば改善し、健康な肝臓を取り戻せます。健康診断で肝機能の異常を指摘されたら、早めに医療機関を受診しましょう」

 ALTが30U/Lを超えていたら受診するのはもちろんだが、肝機能の数値が正常でも、肝臓にダメージを与え続ける過度の飲酒は禁物だ。過度の飲酒は、純アルコール量換算で男性なら1日平均60g以上、女性では1日40g以上と定義されている。