40代に差しかかったあたりから、スマホの小さな文字がどうにも見えにくい――。着々と進行する老眼に、不便を強いられている人は少なくないだろう。誰しも老いに逆らうことはできないが、それでも手元がよく見えないのは不便極まりないものだ。老眼を治療する方法、あるいは進行を遅らせる方法はないのだろうか? (取材・文/フリーライター 友清哲)
先進国の約3分の1の人間が
老眼をケアできていない
白髪や小じわの発生、体力の低下などと同様に、小さな文字がてき面に見えにくくなる老眼は、われわれにとって最も認識しやすい老化現象のひとつだろう。40代である筆者の周囲でも、スマホの文字を新聞の小見出し大に設定する人が増えてきた。
老眼とは、加齢に伴って目のピントが合いにくくなる症状を指している。具体的には、眼球の中でレンズの役割を担っている水晶体が硬くなり、毛様体筋が働くことができなくなることで生じる現象だ。
「医学的には”老視“と呼びますが、その症状の表れ方はもともとが遠視であったか、近視であったかに左右されます」
そう語るのは、医療法人社団久視会いわみ眼科の岩見久司院長だ。
「たとえば遠視の人(視力の高い人)は、手元の細かい文字などを見る際、ピントを合わせるのに近視の人よりも強い調整力が必要となります。そのため、遠視の人ほど老眼を自覚するのが早い傾向があります。逆に、ピントを元に戻す力も落ちてくるので、近視の人(視力の低い人)が若い頃より遠くにピントが合わせにくくなるのも、同じく老眼の症状と言えます」
スマホや新聞の文字を読むのに、顔から少し遠ざけなければピントが合わないようになるのも、老眼による調整力の衰えによるものだ。
たしかに、もともと視力の低い筆者は、他の同世代と比べて老眼の進行がやや遅い。若い頃には眼鏡いらずの人を羨ましく思ったものだが、いまではまだ細かい文字がそこそこ読める自分に優越感を覚えることもしばしばだ。
とはいえ、老眼が老化現象である以上、誰もが無縁ではいられない。問題は「先進国の約3分の1の人が、適切な老眼鏡などの道具を使えていないというデータがあり、自ずと日常生活や仕事効率に悪影響を及ぼしている」ことだと岩見先生は指摘する。