コロナの感染拡大による在宅勤務や生活スタイルの変化により、20~30代の若い人たちの間で、つみたてNISA口座を開設する動きが急増した。そして、2024年からは新NISAがスタートする。本連載では、新NISAをきっかけに投資や資産形成を始めてみたいという人に向けて、失敗しないためのポイントをわかりやすく解説していく。新NISAはこの9本から選びなさい』(中野晴啓著、ダイヤモンド社)の内容を基に、一部を抜粋して公開する。「新NISAってなに?」というビギナーの人でも大丈夫。基本的なところからわかりやすく説明するので、ぜひ最後までお付き合いください。

新NISAのしくみ、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」のちがいとは?Photo: Adobe Stock

新NISAのしくみ(その2)
「つみたて投資枠」と「成長投資枠」

 下図にあるように「新NISA」には、2つの枠が設けられています。

 ひとつは「つみたて投資枠」で、これはつみたてNISAの新バージョンと考えていただければいいでしょう。

 年間の投資枠は120万円なので、つみたてNISAの40万円から大幅にアップしました。かつ、1年=12ヵ月間で割り切れる金額になった点も評価できます。

 つみたてNISAは年間の投資枠が40万円だったため、12ヵ月で割ると、1ヵ月あたりの積立金額が3万3333円という割り切れない額になるというデメリットがありました。これが年間120万円までの枠が認められたことによって、1ヵ月最大10万円まで積み立てられるようになったのです。

成長投資枠での投資が認められるのは、
1200万円まで

 そして、もうひとつの枠が「成長投資枠」です。こちらは一般NISAの後継制度と考えて良さそうです。非課税枠は年間240万円までで、積立投資の枠として用いることもできますし、一括投資も可能で、かなり多様な投資信託や個別株式にも投資できます。

 ちなみに、1800万円という非課税保有限度額のうち、成長投資枠での投資が認められるのは、1200万円までとなっています。つまり全額を成長投資枠で投資することはできないのです。

 でも、つみたて投資枠のみで、非課税保有限度額である1800万円を使い切ることは認められています。この非課税保有限度額は、買い付けた時の額で管理されます。

 たとえば、100万円で購入した投資信託の基準価額が値上がりして150万円になったからといって、生涯投資枠が値上がり益である50万円分、減額されたりはしません。100万円で購入した投資信託は、あくまでも100万円で評価されて、生涯投資枠が管理されるのです。したがって、NISA口座内の商品を売却した場合は、その商品の買い付けた時の価格分の非課税枠を再利用できることになります。

 ところで、一部では生涯投資枠(1800万円まで)を設けたことについて、「がっかりした」という声があるのも事実です。できれば生涯投資枠など設けず、投資によって得た収益については全額、非課税にするべきではないか、という意見もあったようです。

 しかし、これはさすがに税務当局の手前、無理でしょう。そもそも非課税枠によって税金を取れなくなることを、税務当局は嫌がりますから、1800万円という生涯投資枠が認められたこと自体が、私は奇跡に近かったと考えています。

中野 晴啓(なかの・はるひろ)
なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1987年明治大学商学部卒業。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、2006年セゾン投信株式会社を設立。2007年4月代表取締役社長、2020年6月代表取締役会長CEOに就任、2023年6月に退任。
2023年9月1日なかのアセットマネジメントを設立。
全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にする活動とともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。公益社団法人経済同友会幹事他、投資信託協会副会長、金融審議会市場ワーキング・グループ委員等を歴任。
著書に『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)他多数。