運動したい、でもできない……。そこで本連載は論文マニアとしても有名な大谷義夫先生(医師)が、82の論文、世界の最新エビデンスをもとに正しく効果的な歩き方を書いた本『1日1万歩を続けなさい』から、今日から役立つ「歩き方のコツ」をお伝えします。ウォーキングは体にいい。それはたしかに事実です。でも実は「ただ歩くだけ」では効果が出にくいことをご存じでしょうか。同じ歩くなら「科学的な歩き方」で「最大効果」を手に入れる。ここを目指してみてください。
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横断歩道の白線をまたげなくなったら要注意
「歩幅が狭くなると認知症のサイン」
国立環境研究所の谷口優氏は、東京都健康長寿医療センター研究所での研究で、群馬県と新潟県の70歳以上の男女670名の歩幅を測定し、男女別に「歩幅が狭い・普通・広い」人に分類しました。
歩幅は体格によって異なりますが、この調査で「広い」としたのは、男性は70センチ以上、女性は65センチ以上。
およそ3年後再調査をしたところ、歩幅が狭い人は広い人に比べて認知機能低下のリスクが3倍以上になっていたことがわかりました。
そこで谷口氏は、歩くときは歩幅65センチ以上で歩くことをすすめています。
「ちょこちょこ歩き」をしていませんか?
街ではいわゆるちょこちょこ歩き(歩幅が狭く小股でちょこちょこ歩く歩き方)を目にすることがありますが、谷口氏の研究によるとこの歩き方は認知症になりやすい歩き方だと言えるかもしれません。
そこで歩くときは歩幅65センチを意識したいところですが、歩きながらメジャーを持って歩幅を測るというのは現実的ではありません。
そんなとき参考にしたいのが「横断歩道」。
横断歩道の幅は「45センチ」
横断歩道は白線の幅も白線間の幅も45センチになっているので、下図を参考にまずは「横断歩道の白線をまたげなくなったら要注意」と考えて、自分の歩幅を一度、チェックしてください。
さらには歩幅65センチ以上を目指して「白線の幅+半分」くらいの幅を目安に歩いてみるのはいかがでしょうか。
ただこれは、実際にやってみるとなかなかどうして難しい!
そういう人はいきなりではなく少しずつ歩幅を伸ばすとよさそうです。
歩幅が伸びれば適度な負荷がかかるとともに、認知症予防にもなって効果的です。
※本稿は大谷義夫著『1日1万歩を続けなさい』より、一部を抜粋・編集したものです。本書にはウォーキングの効果にまつわるさまざまなエビデンスと、具体的かつ効果的な歩き方が紹介されています。
※1 Taniguchi Y, et al. A prospective study of gait performance and subsequent cognitive decline in a general population of older Japanese. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2012 Jun;67(7):796-803.doi: 10.1093/gerona/glr243. Epub 2012 Mar 2.
※2 歩幅を広げて認知症を予防 狭いと高まる発症リスク(国立環境研究所 谷口優主任研究員)|医療ニュース トピックス|時事メディカル|時事通信の医療ニュースサイト (jiji.com)