「今の人間関係を続けるのに疲れた」
そう思ったことはありませんか? そんな悩みについて語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/種岡 健)

「人間関係リセット症候群」のクセがついてしまった人の特徴Photo: Adobe Stock

「人間関係リセット症候群」というクセ

「あ~、あの人との関係をリセットしたいな……」

 そんなふうに考えたことが、あなたにも一度くらいあるのではないでしょうか。

 厄介な上司。
 うるさい親。
 気まずくなった友達。

 私たちは、厄介な人間関係に囲まれながら生きています。そんな人間関係を、なんの前触れもなく切ってしまう。
 そんなクセを持ってしまった人のことを、ネットを中心に「人間関係リセット症候群」と呼ばれるようになりました。

「厄介な人間関係を切れるのであれば、それっていいことなんじゃないの?」

 そう思ったかもしれません。

 しかし、なんの前触れもなく急に手放してしまうと、手放した後で困ることになります
 仲のいい友人や心配してくれる家族など、自分にとって大切な人とのつながりであっても、簡単に関係を切ってしまうことがあるのです。

「人間関係を続けるのに疲れた」
「とにかく自分一人の世界にしたい」

 そんな衝動的な理由で、一切の関係を絶ってしまう。
「人間関係リセット症候群」は、行きすぎると厄介な状態になるのです。

誰にでもある負の感情

 誰だって職場や友人などのつながりで、「息苦しさ」を感じてしまうことがあるはずです。
 まるで厄介なあやとりのように、人間関係が絡まってしまって、そんな絡まりを解くために人間関係の糸を切って解消させてしまう。

 そんな「リセット」によって少し気持ちがラクになり、救われた実感を得たときに、それがクセとなり、繰り返すようになってしまうのです。

「理性的な私」は、関係を切らないほうがいいと思っている。
 それなのに、「感情的な私」がリセットを求めてしまう……。

 そのねじれを解消していきましょう。

「理性的な私」を育てる

 メンヘラな自分を克服するためには、「理性的な私」を育てて、「感情的な私」をうまく乗りこなす必要があります。

「感情」が先立ち、メンヘラになってしまっているときは、「考え方のクセ」という針が刺さったままになっています。
 この針を抜くために、

ステップ1:自分がどうなりたいかを妄想する(認知)
ステップ2:自分の邪魔をする感情を数字で観察する(感情)
ステップ3:ジンクスを取り入れて感情をコントロールする(行動)
ステップ4:ジンクスを繰り返すことでひも付けする(廻転)

 という4つのステップによって、「ハラ落ちした体験」に至り、思考と感情のバランスが整えられます。

 この詳しい個別の方法については、他の記事や拙著に譲りましょう。

 どんなに素晴らしい方法論でも、あなた自身が「やってる感」を持ってくれなければ意味がありません。
 もし、ここまでを読んでみて、「なんか難しそう」「ちょっとやったけどうまくいかなかった」と感じた人は、いったん保留にして休んで大丈夫です。

 すべてをすぐに完璧におこなう必要はありません。「失敗は奇貨」だからです。
 うまくいかなかったことで余計にイライラしたり、自信をなくしてしまっては本末転倒です。

 少しずつ「理性的な私」を育てて、人間関係リセット症候群を乗り越えていきましょう

(本稿は、頭んなか「メンヘラなとき」があります。より一部を抜粋・編集したものです)

精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医。
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。