「職場の雰囲気が悪い」「上下関係がうまくいかない」「チームの生産性が上がらない」。こうした組織の人間関係の問題を、心理学、脳科学、集団力学など世界最先端の研究で解き明かした本が『武器としての組織心理学』だ。著者は、福知山脱線事故直後のJR西日本や経営破綻直後のJALをはじめ、数多くの組織調査を現場で実施してきた立命館大学の山浦一保教授。20年以上におよぶ研究活動にもとづき、組織に蔓延する「妬み」「温度差」「不満」「権力」「不信感」といったネガティブな感情を解き明かした画期的な1冊である。本稿では、特別に本書から一部を抜粋・編集して紹介する。(初出:2021年11月26日)

武器としての組織心理学Photo: Adobe Stock

職場の人数によって、働く人の心理も変わる

 どんなに優れた処方箋であっても、すべての職場に適合するとは限りません。組織の心理学において、一定の頑強な理論は存在しますが、とりわけ人間関係の凸凹については、そこまで簡単な話ではありません。

 同じ人間でも、ところ変われば処方箋の効果も異なります。

 人間関係の凸凹について一つわかってきていることは、チームの規模に影響されるということです。

 同程度の凸凹のある人間関係が、小規模のチームで存在している場合と大規模のチームで存在している場合とでは、チームメンバーに与えるインパクトが異なります。(関連記事:リーダーが絶対に言ってはいけない「一瞬で信頼を失う発言」

「人間関係の凸凹」が拡大すると、人は協力しなくなる

 北京科技大学のスイ教授らは、中国にある会社(製造業や電気通信関連の会社)を対象に調査を行いました。[1]

 小規模とは4~5人程度のチームを、大規模とは10人程度のチームを想定しています。

 彼らの分析の結果によると、まず、同じチーム内に身内とよそ者の区別が多少は存在しても、ある程度の凸凹の関係性は、協力し合い、チームのパフォーマンスを促す刺激になっていました。

 しかし、その凸凹が大きい(上司との関係性が極めて良好な部下もいる一方で、非常に険悪な関係の部下もいて、その差が大きい)と、協力もパフォーマンスも低いレベルになりました。

 これは、やはり凸凹の少ない上司と部下の関係性を築くのがいいという話で落ち着く結果です。

 ですが、この研究結果には続きがあります。