ガソリン補助金の延長が続く中、注目される石油会社の決算。ENEOSホールディングスは通期予想を上方修正した。大きな影響を与えているのは、原油高と円安だ。ENEOSは製油所でトラブルも相次いでいるが、経営の実力はどのように読み解けばいいのだろうか?(桃山学院大学経営学部教授 小嶌正稔)
補助金よりも原油高と円安の影響大
ENEOSは通期予想を上方修正
ENEOSホールディングス(HD)の2024年3月期第2四半期(23年度上期)決算で目立ったのは、ガソリン補助金が継続される中で、原油高や円安の影響が大きかったことだ。
売上高は6兆6195億円(前年同期比10.5%減)、営業利益は2915億円(同26.2%減)、最終利益は1717億円(同31.0%減)に落ち込んだ。一方で、原油高や円安を反映して通期予想を上方修正。最終利益は従来予想の1800億円から2400億円(前期は1437億円)に修正し、増益率は25.2%増から66.9%増に拡大する見通しとなった。
ただ、石油会社(精製・元売り)の経営について、原油や為替などの外部要因に翻弄されている状況ばかり見ても、あまり意味がない。石油会社の決算を正しく理解するには、原油の在庫評価(在庫の影響)を除いた利益で見る必要がある。また、各社の経営の実力を知るには、規模、稼働率、運用力(現場力)が重要なキーファクターだ。
一例として、ENEOSとコスモ石油の稼働率を比較すると、コスモ石油のほうが“勝ち組”であることが判明する(詳細は後述)。ENEOSは製油所で頻発するトラブルを改善するため、AI(人工知能)で製油所運転を自動化することを目指すという。
次ページでは詳しい数字の推移を見ながら、石油会社の業績および経営力を読み解いていこう。