「とっさの質問にうまく答えられない」「『で、結局、何が言いたいの?』と言われる」「話し方やプレゼンの本を読んでも上達しない」……。そんな悩みを持つ方は、言語化の3要素である「語彙力」「具体化力」「伝達力」どれかが欠けていると指摘するのは、文章や話し方の専門家であり言語化のプロである山口拓朗氏。本連載では、山口氏による話題の最新刊「『うまく言葉にできない』がなくなる言語化大全」の中から、知っているだけで「言語化」が見違えるほど上達するコツをご紹介していきます。

必要な「情報」や「言葉」が次々に舞い込むようになるすごい方法Photo: Adobe Stock

「言葉」は意識していないと見過ごしてしまう

会話や体験、読書によって、新しい言葉を増やしましょうとこの連載ではお伝えしてきました。そこで今回は、言葉と出会う確度を高めるテクニックを紹介します。

ちょっと実験してみましょう。今から10秒間で、あなたの身の回りにある「赤いもの」を3つ探してください。

……探しましたか?
それでは、身の回りにある「青いもの」を3つ答えてください。

「赤いもの」を探したあなたは、ひとつも答えられないかもしれません。おそらくあなたは実感したのではないでしょうか。「人間は意識しているものは目に入ってくるけれど、意識していなければ、その多くを見過ごしている」ということを。

これには、脳機能のひとつである「RAS(ラス)」が関係しています。

人間は、目や耳などから入ってくる情報を、無意識のうちに取捨選択しています。簡単に言うと、自分が意識していない情報はフィルターをかけてカットし、逆に意識している情報は「大事な情報」と判断し、積極的に脳に取り込んでいきます。これがRASの特徴です。

RASを賢く活用することによって、自分にとって必要性の高い言葉や情報を、集中的に集められるようになります。
具体的には、集めたい情報を書き出すことをおすすめします。「書く=脳内にアンテナを張る」です。書き出すことで、脳の情報収集態勢がアップデートされ、必要な情報が次から次へとアンテナに吸い寄せられてきます。

たとえば、あなたが携わる新しいプロジェクトのターゲットが10代の若者だとします。彼らの趣味嗜好を探るため、「10代、ブーム、好きなアーティスト、遊びに行く場所、目標や夢」など、ターゲットを知るための関連ワードを書き出します。
書き出した瞬間に、脳内にピーンとアンテナが張られ、関連情報が勝手に舞い込み始めます。また、「10代 ブーム」で積極的にスマホ検索するなど、(アンテナに従って)本人の行動も変化します。

常に脳内にアンテナを張っている人と、そうでない人の情報獲得量には大きな差が生まれます。すぐに使える言葉や情報を効率よく収集することによって、話したり書いたりする際の言葉選びの苦労が減り、実のある内容を伝えられるようになります。

*本記事は、山口拓朗著「『うまく言葉にできない』がなくなる言語化大全」から、抜粋・編集してまとめたものです。