組織の旧弊打破に率先して取り組み、デジタル化では他メガバンクを先行するなど実績を残した、三井住友フィナンシャルグループの太田純社長。その太田氏が11月25日、膵臓がんのため死去した。同グループは今後も改革機運を維持できるか、真価が問われそうだ。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)
率先してカラを破り続けてきた太田社長
「銀行界の恩人で、多大な貢献をされた方。本当に残念でならない」。三井住友フィナンシャルグループ(FG)の太田純社長が死去した一報を受けて、ライバル関係にある他メガバンクの首脳はそう話す。
太田社長の体調不良が公になったのは11月14日。予定されていた中間決算の記者会見を急きょ欠席したのだ。それからわずか11日後の25日、膵臓がんのため亡くなった。
だがそれ以前から、仕事や会合でやつれた様子だった太田社長の体調を心配する声は、産業界のそこかしこから上がっていた。それは太田社長の「豪放磊落」「親分肌で面倒見が良い」「明るくおおらか」という人柄が、多くのファンをつくっていたからだろう。
実際、太田社長が2019年4月に就任してから取り組んできた改革や数々の施策は、まさしく「人徳の成せる業」だといえる。
「カラを、破ろう。」のスローガンは、太田社長が取り組んだ仕事そのものだ。前例や固定観念、先入観、組織の論理に縛られることなく、自由な発想で仕事をすることを行員に求めた。そうして社内から出てきた事業アイデアが有望であれば、別会社で事業化させた。“言い出しっぺ”を社長にする方針の下、これまでに10人超の社長が誕生している。
直近では23年9月、組織改革を支援するシステム「Wevox」を開発・提供するアトラエとの合弁会社社長に、事業の発案者である三井住友銀行の杉本秀和氏を就任させた。太田社長が「若造」と言って紹介したように、これまで就任させてきた社長の中で最年少の、36歳での大抜てきだった。
年次での管理が染み付いたメガバンクで、それを無視した若手登用が行内にあつれきを生むことは想像に難くない。だが太田社長はそれを物ともせず、率先してカラを破り続けてきたわけだ。