三井住友フィナンシャルグループが立ち上げた個人向け金融サービス「Olive」(オリーブ)。幸先よく半年で100万件のアカウントを獲得したが、PayPayや楽天グループなどのライバルたちは、まだ脅威とは見なしていない。特集『銀行リテール 最後の決戦』(全6回)の#1では、オリーブがライバルを脅かす存在になるための鍵を探った。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)
100万件突破で順調な滑り出しも
新興勢は「オリーブ脅威にあらず」
「“Olive(オリーブ)を軸”とした戦略は順調に立ち上がっている」
三井住友フィナンシャルグループ(FG)でリテール事業部門長を務める山下剛史執行役専務は、2023年8月の投資家向け説明会でこう言い切った。
オリーブとは、三井住友銀行と三井住友カードが中心となって開発し、3月から提供している個人向け総合金融サービスだ。三井住友銀行の口座やクレジットカード、デビットカード、ポイントの残高などの情報を、スマートフォンアプリで一元的に管理できる。
さらに、提携先のSBI証券や住友生命保険と連携した独自の商品やサービスを提供。国内15万店で使えるTポイントとVポイントを統合し、新たなVポイントとして2024年春から提供する。
オリーブのメニューの中で、最も特徴的なのは「Oliveフレキシブルペイ」だろう。1枚のカードがキャッシュカード、クレジットカード、デビットカード、ポイントカードの四つの機能を併せ持ち、アプリ上で支払いモードを切り替えて使う。タッチ決済も可能で、スマホとこのカードさえ持っていれば、財布を持ち歩く必要はほとんどなくなるというわけだ。
申し込み受け付けから半年間でオリーブのアカウント数は100万件を突破。5年後の1200万件という目標に向けて、冒頭の山下氏の発言通り、順調な滑り出しに見える。
だがPayPay(ペイペイ)や楽天グループなど、個人向け金融サービスにおいて、銀行の牙城をあっという間に崩したプラットフォーマーからは、「オリーブはまだ脅威とは捉えていない」(プラットフォーマー幹部)との声が漏れる。実際、PayPayの登録ユーザー数は6000万人を超えており、その差は圧倒的だ。
もっとも、プラットフォーマーとていつまでも悠長なことを言っていられるわけではない。というのも、三井住友銀行や三井住友カードの動きをつぶさに見ていくと、規模で優位に立つプラットフォーマーに伍していくため、準備を進める姿が浮かび上がってくるのだ。それはいったい何なのか。次ページで詳しく解説していく。