銀行リテール 最後の決戦#3Photo:alexsl/gettyimages

3メガバンクが個人向けリテール事業で衰退した理由は、グループ内の人事や慣例、グループ企業の序列にも見いだすことができる。特集『銀行リテール 最後の決戦』(全6回)の#3では、銀行にとって個人向けリテール事業の要となる、傘下のクレジットカード会社の役員人事を分析。すると、三井住友フィナンシャルグループでは “オリーブ人事”ともいえる異例の抜てきがあった。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)

三井住友FGの役員人事を分析
リテールで先行できた理由

 個人向け金融サービス「Olive」(オリーブ)を2023年3月にスタートさせた三井住友フィナンシャルグループ(FG)。SBI証券やライフネット生命保険、住友生命保険などとの提携を次々と発表。約半年で獲得したオリーブアカウント数のうち約半数は新規顧客で、狙い通り顧客基盤と“三井住友FG経済圏”が拡大し始めている。

 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)とみずほフィナンシャルグループは急ピッチで新たな個人向け金融サービスを構築しようと動きだしているが、この数カ月で三井住友FGとの差は明らかに広がった。

 本特集#2『三菱UFJとみずほが個人向けサービスで三井住友FGの先行を許した理由、「20年前の決断」が今…』では、差が出た理由をシステム面から分析したが、実は役員人事にも見いだすことができる。

 個人向け金融サービスでは、銀行と傘下のクレジットカード会社が核となる。そこで三井住友銀行と三井住友カードの役員人事を分析すると、慣例を破った異例の抜てきが行われていた。

 それはいわば“オリーブ人事”。人事は経営からの最大のメッセージだともいわれるが、なんとしても成功させるという三井住友FG経営陣の狙いが読み取れる。

 次ページで詳しく解説するとともに、3メガバンクそれぞれが傘下に置くクレジットカード会社、三井住友カード、三菱UFJニコス、オリエントコーポレーションの3社の社長の経歴なども振り返りながら、オリーブが先行できた人事面での理由を探った。