政府物価高対策の家計負担軽減は「年4.4万円」か、インフレ支出「年14.5万円増」カバーできずPhoto:Kiyoshi Ota/Pool/Bloomberg/Anadolu via gettyimages

「19兆円」の押し上げ効果
政府の積算根拠は曖昧

 物価高対策や持続的賃上げ支援などを掲げて政府が閣議決定した「デフレ完全脱却のための総合経済対策」とその財源の裏付けとなる補正予算案を巡る議論が国会でも本格化している。

 衆院に続き参院の予算委員会でも、岸田文雄首相が「(税収増の)国民への還元」を掲げた所得・住民税減税の是非や経済対策全体の効果について、野党からは疑問や批判が相次いだ。

 実際、今回の経済対策の効果はどの程度なのか。政府はGDPの押し上げ効果を19兆円としているが、筆者の試算では、押し上げ効果は2023~24年度にかけて6兆円、率では0.9%程度にとどまる。人手不足で供給制約が強まる中、政府の積算の根拠は曖昧だ。

 目玉である物価高対策のガソリンや電気・ガス代の補助による家計の負担軽減額は、物価上昇による1世帯当たりの年間の支出増が14~15万円に対して4.4万円を軽減するにとどまる計算だ。

 所得減税や給付金と合わせると、計算上は物価上昇分の支出増をようやくカバーすることになるが、減税実施は来年6月になり、当面の物価高への対応としては限界がある。

 ガソリンなどエネルギー関連の補助金も高所得世帯は恩恵を得るが、生活支援策としては費用対効果が低いものだ。