スタートアップ採用激化で「ファンベース型の採用」が重要に

冒頭で触れた通り現在Meetyの月間利用者数は7万人以上、利用企業数は500社以上となっている。

直近3カ月でも1カ月当たりに公開されるカジュアル面談の数は平均で1000件を超えており、平均2200件以上のマッチングが発生しているそうだ。今のところは利用企業のほとんどがIT系だが、パイオニアや鹿島アントラーズなど、少しずつ異業種にも広がり始めているという。

Meetyの利用が増えてきている背景には、スタートアップを中心とした採用市場の変化も大きく影響している。

近年はエンジニアを筆頭に、スタートアップにおける人材獲得競争が激化。少しでも優秀な人材を採用するための仕組みとして信託型のストップオプションやフルリモートワークなどの環境を整える企業が増えているほか、副業や業務委託による採用も珍しく無くなってきた。

転職エージェントに通常の手数料より多くの金額を還元する「フィーアップ求人」も増加傾向にあり、転職エージェントのギークリーの調査によると年収の100%分の手数料を支払うケースもある。

このように採用の難易度が高くなってきているからこそ、自社の認知度を広げていくための取り組みやブランド作りの重要度が今まで以上に増している。中村氏が言うところの「ファンベース採用」だ。

Meety上に会社ページのようなものを開設する「ウラ凸」と呼ばれる企画も好評
Meety上に会社ページのようなものを開設する「ウラ凸」と呼ばれる企画も好評。最近では資金調達などのタイミングに合わせて、複数の社員がMeetyのコンテンツを作り、全社で採用に取り組むような例も増えてきている

一方で「これだけ市場が変わってきているにも関わらず、候補者の体験自体はあまり変わっていない」というのが中村氏の考え。求人サービスのスカウトの体験やカジュアル面談の体験など、候補者体験の観点では改善できる余地はまだまだ残されており、それがMeetyにとっては事業のチャンスにもなりうるという。

同社では2021年3月にHIRAC FUND、ANOBAKA、XTech Venturesを引受先とする第三者割当増資により総額1.9億円を調達し、サービス開発を進めてきた。これまでは完全無料でサービスを展開してきたが、2022年内には企業向けの有料プランも提供する計画だ。

「現時点では(スタートアップなど新興企業を中心とした)狭いコミュニティの中で、熱量の高いユーザーや企業の方々に使っていただいている状態です。今後の課題は優れた候補者体験を実現しながら、どこまで広げていけるか。特に有料プランを始めると企業の採用に目線が行ってしまいやすくなると思いますが、今後も候補者体験にこだわってチャレンジを続けていきます」(中村氏)