本件の公表以降、複数のリーガルテック関係者や法曹関係者の間では、サービスの適法性や、照会した事業者の意図などさまざまな議論が続いている。電子契約サービスの「CloudSign」などを提供する弁護士ドットコムは2022年3月期の決算説明会において、AI契約書審査サービスの提供を検討している意向を表明。経産省と日本弁護士連合会に適法性などの照会を求めていると説明している。だが弁護士ドットコムの広報は、「今回の照会は自社によるものではない」と否定している。

グレーゾーン解消制度とは本来、事業者の事業計画が法的にシロかクロかをはっきりさせ、新規参入を後押しするための制度だ。だが今回の経産省の回答は、AI契約書審査サービスが「黒に近いグレー」と位置付ける内容と言っても過言ではない。既存の事業者は顧客や投資家への対応や、資金調達、上場審査などの足かせとなり、リーガルテックスタートアップの成長を阻害しかねない。

GVA TECHの山本氏は「(経産省の回答は)違法と断じてはいないものの、違法と評価される『可能性』があると明確に示した点で、これから適法な領域と違法な領域の切り分けがされていく、その起点たる位置付けの回答であったと受け取っております」と話す。事業者がこう述べるとおり、スタートアップと法曹界が手を組み、リーガルテックのあるべき姿を模索する時が来たようだ。