アメリカではソーシャルメディア経由の採用が92%の企業に浸透し、採用企業の65%が人づての紹介に褒賞を設ける「リファーラル・リクルーティング」を採用しているというデータがある(Jobvite 2012年レポート)。知人を紹介することで金銭を得るしくみが定着し、求人情報をSNSで拡散させる原動力になっているようだ。

「Grrefer」は利用者の安心感を重視しており、「安心してご利用いただくために」というガイドラインをサイト上に明記している

 日本でリファーラル・リクルーティングを展開する先駆的なサービスとしては、2013年1月24日にスタートした「Grrefer(グリファー)(1)がある。Facebook経由でサービスに登録した会員が、SNSを通じて求人情報を告知し、それを見た「友だち」が応募して転職が成立した場合に、会員、友人の双方に10万円のお祝い金・お礼金が支払われるというのが基本的なしくみ。

 Facebookでのソーシャルグラフ(友だちの輪)が、求人情報の送付先として利用されており、取材時点(2月上旬)で登録会員は800人ほどだが、「会員がリーチできるFacebook上の友達は延べ17万人以上」(株式会社SRE 阿部雄太氏)になるという。この拡散力が、ソーシャルメディアのメリットであり、しかもその17万人は、リンクで結ばれている類縁性の強い集団で、情報としての価値も大きい。

 ソーシャルメディアが普及した理由のひとつに、洪水のように押しよせる情報を選別したいという動機がある。趣味や仕事でつながりの深い友人は、関心の対象も共通点が多い傾向にある。だから友人たちの着目する記事や書き込みを追っていけば、おのずと自分にとって価値ある情報ばかりが選別される。言うなれば、友人を情報フィルターとしてとらえる発想である。

 Grreferのサービスは、こうしたソーシャルメディアの活用動機を巧みに生かしたものだ。登録会員が着目した求人情報は、その友人にもアピールする可能性が高い。ばくぜんと転職を考えていた友人がその求人情報に反応することもありえるわけだ。従来の求人広告サイトでは、自分から積極的にアクセスする人にしか情報は届かなかった。この違いは大きい。

 また、Grreferは登録会員のFacebook上の友人の公開プロフィールを参照して、学歴や職歴が条件にマッチする人の公開メールアドレスに求人情報をメールで届けるサービスも行っている。

 前述のように、Grreferでは転職成立時に会員とその友人の双方に10万円ずつの褒賞が支払われるわけだが、その原資を負担するのは求人企業。従来、企業が人材紹介会社に依頼して求人を出す場合の費用に比較すれば、企業の負担も抑えられるかたちとなる。

 さらに、それによって転職のイニシアチブが企業側から求職者側にわずかにでもシフトする効果も期待できる。「Grrefer」の今後に着目したい。

(1)「Grrefer」のサイトは株式会社SREが運営し、サービスそのものの運営は、株式会社トレジャーブレーンズが行っている。

(待兼音二郎/5時から作家塾(R)