「意味と音」の英単語収録数は「1万2000語」。これだけのボリュームとなると、まず画像を集めるだけでも大変な作業だった。当初AIやプログラムで進めようとしたものの、いざ集まった画像を確認してみると、そのクオリティは納得がいかないものだった。

一つひとつの英単語が持つ意味が的確に表現されていて、アプリを使った人が見ただけで強く記憶に残るものにしたい。そんな思いから、画像選定だけで1年以上もの手間・時間と多額のコストをかけた。

収録単語はAppleのような名詞だけでなく、動詞、形容詞、副詞など多岐にわたる。Appleのように比較的簡単なイメージは良いが、例えば「Formerly(以前は)」という英単語のように抽象的な概念を持っている単語には特に苦労した。

当初プログラムが選んだ画像と、実際に人の手で選び直した画像とでは「どちらが記憶に残りやすいか」という点で明白な違いがあったのだ。

アプリ「意味と音」に収録されているformerlyの単語イメージ
アプリ「意味と音」に収録されているformerlyの単語イメージ

また1つの単語で複数の意味を持ち合わせている「多義語」も工夫を凝らした点だ。例えば「Book」のように「本」という意味と「予約する」という意味を持つ単語の場合、1枚の画像で複数の意味を表現することはできない。そのため「1つのカードには1つの意味」のルールを設け、分けて記憶できるようにした。

「英語が生活の一部になる」地点まで連れていきたい

英語ができるようになった、得意になったという人たちはみんな、さまざまな努力をしている。もちろん、英単語を覚えるにあたって「スペルと日本語訳」でがんばって覚えていたという人も多い。だが、いろんな過程を経て英語を使っていく中で、少しずつ頭の中に単語一つひとつに対するイメージができていき、英語を英語のままで、日本語を介することなく使えるようになっていく。

そうしていくうちに、ある地点から英語が勉強でなくなり、好きなことや、興味のある分野の情報を英語で取るなど、英語が生活の一部になっていく。つまり「英語『を』勉強する」のではなく「英語『で』勉強する」に変わっていくのだ。

「意味と音」では、英語上級者が通ってきたこの長い道のりを、理論に基づいた仕掛けで、より効率的に、ダイレクトに可能なものにしたい。

学生さんや受験生に簡単に英単語を覚えてもらいたいし、長年英語学習を続けているが、苦手意識がありどうしても単語が覚えられない。いつまで経っても話せない。でも、諦めきれない。そんな人にも使ってもらいたいと思っている。

当初は教室の生徒さんが「より効率的に英単語を覚えられるように」と始まった、このプロジェクト。中には60代から英語を始めた方もいる。アプリを使いはじめて1カ月半ほどで「周りのものが英語で見えてくるようになりました」という声もいただいている。高齢で記憶力が落ちた、海外に孫がいて海外旅行したいけれど、英語が覚えられないと思っている人にもぜひこのアプリで英語を身近なものにしていただきたい。