私は、AIに取り組んでその未来を素晴らしいものにすることが、今最も重要な課題だと考えています。次に、遺伝学に関係することに取り組むことも重要です。遺伝子組み換えで認知症やアルツハイマーを予防することができれば、素晴らしいことです。

また、脳への広帯域インターフェイスを持つことも重要です。現在、私たちは帯域幅を制限されています。私たちは、Eメールやコンピュータ、スマートフォンによって、デジタルな自己を持っています。それによって私たちは超人的になりましたが、大脳皮質とデジタルな自分との間のインターフェースにおいては帯域幅に非常に制約があります。帯域幅の制約を解決することも未来にとって重要だと言えるでしょう。

“次のイーロン・マスク”になるには

サム:若い人たち、野心的な人たちがよくする質問のひとつに、「次のイーロン・マスクになりたいんですが、どうすればいいですか」というものがあります。もちろん、次のイーロン・マスクは、あなたとはまったく異なることに取り組むでしょうが、あなたが若いころにやったことで、今のように大きな影響力を持つきっかけになったことはなんですか。

イーロン:まず、私はこんなにたくさんのことに関わることになるとは思っていなかったと言うべきでしょう。大学時代、25年前のかなり昔のことですが、当時考えていたのは、複数の惑星で生命が暮らせるようにすること、持続可能なエネルギーへの移行を加速すること、広義のインターネット、それから遺伝学とAIの5つでしたね。まさかそれらすべてに関わることになるとは思ってもいませんでした。

実は大学時代、自動車の電化に携わることからキャリアを始めようと思っていて、インターンとして先進的なコンデンサー開発に取り組みました。自動車用のエネルギーを蓄えるバッテリーに代わる画期的な技術を考えていたのです。

スタンフォード大学では、大学院で電気自動車用のエネルギー貯蔵技術の研究をする予定でした。でも、1995年にインターネット企業を立ち上げるためにそれを保留にしました。特定のテクノロジーが急激な変曲のポイントにあると思えたからです。

スタンフォード大学で博士号を取りながら、その成り行きを見守るのは嫌でした。それに、自分が取り組んできた技術が本当に成功するかどうかも確信が持てませんでした。博士号を取っても、結局は世の中に何の役にも立たないことがたくさんあります。私はただ、本当に役に立ちたかったんです。自分に何ができれば実際に役に立つのか、という最適化を考えたのです。