ギフトEC「TANP」出身者が立ち上げた会員制EC

会員制のECサイトは、中国でも盛り上がりを見せている領域のひとつ。会員制ECサイトの代表格として知られているのが、2017年8月にリリースされた「海豚家(Dolphin Home)」だ。海豚家は会員制を軸に、良い商品を安く購入できる価値を提供することでユーザーから支持され、2018年時点で会員数5000万人を突破、GMV(流通取引総額)は3000億円を突破。2019年にはシリーズCラウンドで100億円の資金調達を実施している。

また、同様のサービスを展開する「雲集(Yunji)」は2019年5月に米ナスダック市場に上場するなど、会員制ECサイトを展開するプレーヤーの数も増えつつある。

そうした中国での会員制ECサイトの盛り上がりを知り、神﨑氏は「日本でも同じように会員制のECサイトを展開したら面白いのではないか」と考えたという。神﨑氏はギフトEC「TANP」を展開するGraciaで働いていた経験があり、ECサービスに関する知見があったことから、日本で会員制ECサイトを展開することを決めた。

人気のコスメを安く購入できる場所としては、日本ではeBayが展開する「Qoo10」がよく知られている。Qoo10が日本でも普及していることから、会員に対して商品を卸値で販売することへの理解もあると思い、まずはコスメの展開から始めたという。

Parchie代表取締役の神﨑陸氏
Parchie代表取締役の神﨑陸氏

「コスメブランドにとっては、20代女性が多く集まるプラットフォームに商品を展開できる点が大きな魅力です。またQoo10との違いとしては、私たちはブランドから出店費用や売上手数料を取らないため、出品しやすい仕組みとなっています」(神﨑氏)

また、大多数の人に商品を安く販売してしまうとブランドイメージの毀損(きそん)につながりかねないが、あくまで“月額費を支払っている会員のみ”にすることで、ブランド側としては商品を安い価格で提供できる“言い訳”がつくれているとのこと。

サービスリリース以降、取り扱いブランド数は約400ブランドに増えたほか、商品数は約9000SKU(Stock Keeping Unit:在庫の最小管理単位)規模にまで伸びているという。

コスメ以外のカテゴリーの拡大や物流の強化にも着手

なぜ、20代女性に「会員制」というモデルが受け入れられているのか。その背景にあるのが、「特別な購買体験の提供」にあると神﨑氏は言う。

「今の時代、Amazonで欲しいものはほとんど購入できるようになり、すごく便利になった一方で購買体験自体は無機質なものになってしまったと思うんです。だからこそ、他では味わえないような特別な体験にはお金を出す、という価値観の人が増えています」(神﨑氏)