2023年に注目すべきスタートアップについて教えてください。投資先の場合は、その点を明示してください。
「確かなものに賭けろ」、つまり、近い未来に起こる社会トレンドや、ユーザー行動のパラダイムシフトに投資するべきだという原則論をもって、日々、投資活動を行っています。では、2023年の日本市場で起こる「確かなもの」とは、何でしょうか。1つ、最も簡単なものを挙げるとすれば、新型コロナウイルス禍の沈静化と、観光産業全体の復活があると考えています。そういった文脈で、2社、旅行ドメインの投資先スタートアップを紹介します。
・NOT A HOTEL
現在、国内外130社のスタートアップに投資していますが、その中でも一、二を争うユニークな世界観と、独自の成長戦略をもっている会社です。ホテルや別荘の利用体験をITの力で再定義するというコンセプトで、2020年に会社を設立しました。
オーナーが別荘を利用しない日をホテルとして稼働させられる点や、利用権をNFTで販売するなど、その社名の通り、新しいカタチの宿泊体験を創造しています。初年度には、オンラインのみで、建物を建てる前の段階で約40億円を完売。累計調達額は約40億円、2025年までに30箇所の拠点づくりを計画中です。宿泊業という極めて歴史の長い伝統的な産業に、若い起業家の情熱が注ぎ込まれると、このような新しいユーザー体験とビジネスモデルが産まれるのか、という純粋な感動が湧いてくるスタートアップです。
・令和トラベル
国内宿泊予約サービスのReluxを創業、KDDIへ売却したことでも知られる篠塚さん(篠塚孝哉氏)が創業した、海外旅行客向けのデジタルトラベルエージェンシーです。2021年4月に創業、その2カ月後にシードラウンドで22.5億円を調達。シリアル起業家の王道をいくような華々しい大型資金調達は、メディアでも大きく取り上げられました。
コロナ禍の真っ只中に創業した篠塚さんの当時の発表を読むと、「コロナによって完全なるマーケットリセットが起こったことは大きな後押し」「マーケットは絶対に戻るしこれほどの参入チャンスは一生に一度とないかもしれない」など、極めて冷静、かつ情熱的な表現が続きます。そしてその予言通り、2023年は海外旅行市場の回復期にあたるでしょう。アフターコロナにおける海外旅行の回復予測については、解像度の高いシナリオ分析を令和トラベルが発表しているので、興味のある方はぜひ参照してみてください。