スタートアップへの再投資に係る非課税措置(エンジェル税制)の創設については「創業間もないスタートアップ企業を支援したい」「株式の譲渡益を元手に起業したい」という人に向けた制度になっている、と南氏は言う。具体的には、株式譲渡益を元手とするプレシード・シード期のスタートアップ企業への投資および自己資金による起業を非課税化(上限20億円)、投資後に達成すべき外部資本比率を、6分の1以上からプレシード・シード期のスタートアップ企業への投資の場合は20分の1以上、起業の場合は100分の1以上に緩和するという内容となっている。個人からスタートアップ企業への投資を促し、資金供給を強化するとともに、起業を促進することが狙いだ。

オープンイノベーション促進税制でM&A促進については、スタートアップのM&Aを検討している事業会社、スタートアップと協業している事業会社を対象に、スタートアップをM&Aする場合、その発行済株式の取得金額の25%が所得控除されるという制度。所得控除額は最大で1件あたり50億円(取得金額ベースでは1件あたり200億円)となっている。スタートアップのM&AによるExitを促進し、出口戦略を多様化することが主な狙いとなっている。

ストックオプション税制の拡充については、優秀な人材を確保したいスタートアップ企業の経営者(設立から5年未満・未上場)を対象に、税制適格ストックオプションの権利行使期間が、設立から5年未満の未上場企業においては、付与決議から2~15年に延長(従前は2~10年)されるというもの。上場するまでの期間を長く取ることで、大きな成長を目指すスタートアップの人材獲得を支援するのが狙い。

「税制適格ストックオプションができてから、2019年に『社外高度人材にも付与できる』という内容の一部拡充はあったのですが、それ以外は大きくは制度が変わってきていません。今回、税制適格ストックオプションの制度が久しぶりに拡充されるということで、スタートアップ業界にはインパクトがあるものだと思います」

税制改正以外にも、ストックオプションの環境整備に関しては5か年計画でもRSU(事後交付型譲渡制限付株式)の活用などが触れられている。

「現在、有識者と一緒にストックオプションに関する研究会を開催しています。そこでの内容をもとに、スタートアップが成長するためにストックオプションをどう発行すべきか、発行時に気をつけるべきポイントなどをまとめたガイドラインを3月末にリリースする予定です。現状、日本におけるストックオプションは退職したら権利行使できなくなるのですが、それは法律で定められたものではなく、あくまで業界慣習でそうなっているだけ。それ以外の選択肢があることも周知していければと思います」