病院や診療所でもらった処方箋を提出し、病気の治療に必要な薬をもらう——これまで“薬局”は単に薬を受け取るための場所だった。
そんな薬局にテクノロジーを取り入れ、患者が薬剤師に悩みを相談したり、薬剤師が患者にアドバイスしたりできる「かかりつけ薬局」にすることを目指すスタートアップがクラウド型電子薬歴システム「Musubi(ムスビ)」を運営する、カケハシだ。
同社は10月12日、ジャパン・コインベスト、Sony Innovation Fund by IGV、および既存投資家であるCoral CapitalのCoral Growth(既存投資先向け追加投資専用のグロースファンド)、千葉道場、DNX Ventures、Salesforce Venturesを引受先とした総額約18億円の資金調達を実施したことを明かした。同社は2019年10月に26億円の資金調達を実施しており、この1年で44億円の資金を調達。これで累計調達額は約55億円となった。
今回調達した資金は、薬局業界のデジタル・トランスフォーメーション(以下、DX)を支援する既存事業の拡大と新規事業の創出、それに伴う組織の拡充に投資する予定だという。
患者と医療従事者の間にある情報ギャップを解決
カケハシは2016年3月の創業。創業者で代表取締役社長の中尾豊氏は過去に武田薬品工業でMR(医薬情報担当者)として働いた経験を持つ人物だ。MRの仕事を通して、日本の医療の質の高さを感じる一方、患者と医療従事者との間には大きな情報ギャップがあることを課題に感じた中尾氏はその“ギャップ”を解決すべく、2017年8月に患者と真剣に向き合う薬剤師をサポートする電子薬歴システムのMusubiをリリースした。