取締役CTOの海老原智氏

「サービスをリリースする前は多くの薬剤師にヒアリングを実施し、それをもとに服薬指導のフローの最適化に取り組んでいたのですが、実際にリリースしてみると薬剤師さんたちの実情にそぐわない部分も多くあったんです。薬剤師さんが薬局でどういう風に服薬指導しているのか。実際に使ってもらった上での声も踏まえながら、UXなど根本的な部分を細かくブラッシュアップしていきました」(海老原氏)

7月に“薬局体験アシスタント”としてリニューアル

創業後からMusubiの開発・運営に注力してきたカケハシだが、今年の7月に「薬局体験アシスタント」としてMusubiを刷新。服薬期間中のフォローを軸とした患者と薬局の関係づくりをサポートする、患者向けのおくすり連絡帳アプリ「Pocket Musubi」、Musubiのデータを使用して薬局経営上の重要な指標を可視化し、根拠に基づく薬局運営を実現する薬局業務の“見える化”クラウドサービス「Musubi Insight」をリニューアルと同時にリリースしている。

その背景にあるのが、2020年9月に施行された改正医薬品医療機器等法(薬機法)だ。この改正により、服薬期間中の「継続的服薬指導(フォローアップ)」が開始された。また新型コロナウイルス感染症を受けて、2020年4月からいわゆる「0410対応」として時限的・特例的にオンライン服薬指導が解禁されるなど、薬局、薬剤師を取り巻く環境は大きく変化している。

「薬を渡すだけの場所」から「患者さんに付加価値を提供する場所」へ——薬局のあり方が変化する状況を受け、薬局の働き方改革と患者満足を同時に支援すべくMusubiは「薬局体験アシスタントとしてリニューアルしました」と中川氏は語る。また、サービスのリニューアルにあたってカケハシは代表取締役の2人体制へと経営体制を変更している。

 

Pocket Musubiは服用薬データに基づいた質問が薬局から自動で患者のアプリに送信され、患者はその質問に対する回答や体温や食事の内容・薬を用法に従って飲んだかなどをアプリ上で記録する。一方の薬剤師はPocket Musubiの管理画面を通じて患者さんのデータを確認しながら服薬中の状況を把握することで、適切なフォローが行える。

 

「患者さんとの過剰なやり取りや極端な連絡不足を防ぎ、必要な患者さんに最小限の業務負荷でコミュニケーションを図ることで、患者満足を実現しながら現実的で継続可能な業務フロー構築を支援するためのサービスです。特に新型コロナウイルスの影響で薬局に行く機会が減ったことで、こうしたツールの需要は高まっていると思います」(中川氏)