MAMORIO代表取締役社長の増木大己氏
MAMORIO代表取締役社長の増木大己氏

AirTagはアップルがiPhoneやiPad、ワイヤレスイヤホンのAirPodsなどで提供している「探す」アプリと連動する紛失防止デバイス。アップル以外の製品や通電しない持ち物に装着することで、「探す」アプリが使えるようになる。また、世界中で動作しているアップル製品約15億台と連動し、紛失したものを探し出すことができるほか、従来のアップル製品に比べて手が出しやすい1個3800円からという価格も注目を集めた。

過去に米国発の招待制・音声SNS「Clubhouse」が音声サービス市場へ参入したとき、同じ事業を展開しているスタートアップは「逆にチャンス」と期待の声を寄せていた。今回のAirTagについても、増木氏は「アップルの参入で紛失防止デバイスのユースケースが広がることを期待している」と話す。では、具体的にどんな状態になることを期待しているのか。話を聞いた。

AirTagの登場は、MAMORIOにとってチャンスになる

MAMORIOの創業は2012年7月。当時はまたIoTの認知も今ほど高くなく、「忘れ物をなくすためのデバイス」というコンセプト自体が新しすぎた。「周囲に事業内容を理解してもらうのが大変だった」と増木氏は振り返る。

創業直後は落とし物をしたときの対処法や捜索情報・拾得情報をまとめたポータルサイト「落し物防止ドットコム」をリリース。事業として成長させることの難しさを感じていたなか、Bluetooth技術の普及を受けて、2014年に誕生したのが紛失防止デバイス「MAMORIO」だった。

MAMORIOは、他のMAMORIOユーザーとのすれ違いで紛失したものの場所を特定できるクラウドトラッキング機能を搭載するほか、鉄道会社の紛失センターと連携し、あらかじめペアリングしたアプリに「紛失物が届いている」と通知される機能が大きな特徴として挙げられる。

2018年からは個人向けだけではなく、法人向けサービスとして「MAMORIO Biz(MAMORIO OFFICEからサービス名を変更)」の展開も開始してている。

販売開始から約7年で、数十万個以上の販売実績を誇るMAMORIOだが、「紛失防止デバイスの存在自体の認知はまだまだ低い」と増木氏が語る。

ただし、アップルが参入したことで、あまり見向きされていなかった市場は「イノベーションできる領域」へと様変わりした。増木氏が期待を寄せているのは、まさにこの「市場の変化」そのものだ。AirTagの発表後、同製品がiOSユーザーしか使えないことから、Androidユーザーを中心にMAMORIOへの問い合わせも増えているという。