「食料・水・環境」の分野で独自の地歩を築いたクボタ。国内の水道関連業界では比肩し得る存在はなく、農機では稲作用機械のトップメーカーだ。民需が下がれば官需で支え、官需が下がれば民需で支えてきた。だが、公共事業が冷え込み、国内では将来的な成長が見込めないことから、海外シフトに踏み切った。その先には、老舗メーカーの秘めた野心が見え隠れする。(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

 カリフォルニア州ロサンゼルス市ビバリーヒルズ近郊の高級住宅街──。今年1月21日、米国内で初めて独自の“耐震性能”を有する日本の水道管が敷設された。

 施工は、ロサンゼルス市の水道電気局で、最新型の耐震管を納入したのはクボタだった。

「地震が起きても、継手の部分(連結部)が伸縮し、屈折する。かつ、抜けてしまうことがなく、外部に水を漏らさないので水道管路が確保できる」。説明する木村雄二郎常務執行役員兼パイプシステム事業部長の声にも力が入る。

【企業特集】クボタ<br />向こう5年間で海外比率を70%へ<br />農機トップメーカーが描く大構想配水池から住宅地に水を届ける配水管に導入された。継手の部分を連結させ、カチッとはめ込んで延伸させたり異形管と接合させたりして敷設する。100年以上の耐用年数を持つ

 米国西海岸は地震が多く、ロサンゼルス市にとって、水道管路の耐震性強化は大きな課題だった。クボタにとっては、1968年の十勝沖地震の後に市場の要請を受けて、74年に第1号の耐震管(S型)を開発してから40年近くも育ててきた固有の技術だった。

 国内の水道関連業界では、早くから耐震性を備えた水道管の重要性は認識されていたが、費用も手間もかかった。当初は思うように普及せず、埋め立て地に建てられた観光スポットで、地盤沈下対策などに使われていた。