2013年1月より、国内最大の農業機械メーカーであるクボタは、北米進出40年の節目に米国内で3番目となる工場を立ち上げ、“中型トラクタ”(本体)の量産に乗り出す。本体の現地生産に踏み込むのは、今回が初めてとなる。
クボタは、100馬力以下の中型トラクタでは北米市場でトップの座にあり、累計販売台数も120万台を超えた。年間で約9万台売り、「北米ではトラクタの3台に1台はKUBOTA」と言われるほど浸透したのは、富裕層の圧倒的な支持を得ているからだ。
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もっとも、最初から北米市場で受け入れられたわけではなかった。1972年に進出した際は、日本の農家が使っているのと同じ水稲耕作用の機械を持っていったが、米国は畑作が中心であり、大規模農法が主体なので、中小型・軽量の農機はニーズがなかった。
ところが、鳴かず飛ばずの状態で試行錯誤する過程で、試しにアタッチメントとして“草刈り機能”を付けてみると、想定外だった富裕層の注目を集めた。小回りが利いて壊れにくいオレンジ色の農機は、広大な敷地内の軽土木作業や庭園管理作業に向いていたのである。それが突破口となり、未開拓市場を深耕し、ジワジワとブランドを確立していった。
今回、新工場を稼働させるのは、すでに高級品としてのステータスを獲得しているクボタが、割安の普及品で攻める韓国、中国、インドなどの新興メーカーを一気に引き離す狙いがある。加えて、円高リスクを軽減しながら、これまで以上にアジアの生産拠点と連携させ、“世界最適地調達”を進めてコスト競争力を強化したいという事情もある。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)